チーフ (紋章学)

紋章学におけるチーフ（Chief）

紋章学において、チーフ（英: Chief、仏: Chef）は、紋章のシールドの上端を水平にわたる帯状のチャージとして定義されます。これは、シールドの上端に接しているという点で、横帯であるフェスと区別されます。チーフは、ペイル、ベンド、シェブロン、フェスと並び、紋章学における基本的なオーディナリーの一つです。

チーフの幅

チーフがフィールドのどの程度の幅を覆うかについては、紋章学者の間で意見が分かれています。一般的には、フィールドの4分の1から3分の1程度と見なされます。チャージがチーフ上に配置されない場合、つまりチーフがチャージされていない場合は、4分の1という説が支持される傾向があります。しかし、チーフにチャージが重ねられる場合は、その図柄を描くスペースを確保するために、チーフは通常、チャージされていないものよりも広く描かれます。

中世やルネサンス期の紋章では、チーフがさらに広く描かれる例も見られ、シールドの上半分近くを覆うこともあります。場合によっては、シールドがパーティ・パー・フェスで分割されているかのように見えるほどです。

ディミニュティブ

イギリスやスコットランドの紋章学では、チーフのディミニュティブ（縮小形）は存在しません。ただし、より細いチーフを使用したい場合は、「チーフ・エンハンスド (chief enhanced)」という記述を用いて表現できます。

チーフに関する用語

イン・チーフ (in chief)

チャージをフィールドの上方3分の1程度の位置に寄せて配置することを指します。紋章学では「上から順」が基本であるため、他のオーディナリーやチャージに重ねずにフィールドに直接チャージを置く場合以外では省略されることが多く、複雑な図柄でない限りあまり使用されません。

用法

ケイデンシー・マークとしてのチーフ

スコットランドの紋章では、分家の紋章において本家との区別（ディファレンシング）のために、チーフをケイデンシー・マークとして使用することがあります。しかし、通常はボーデュア（紋章の外周を縁取る帯）がケイデンシーを示すために用いられます。チーフがディファレンシングに用いられるのは、本家の紋章がすでにボーデュアを使用している場合にほぼ限られるため、稀なケースです。

ディファレンシングとは、個人や分家を区別するために、元の紋章に何らかのチャージを加えてわずかな違いをつけることを指します。ケイデンシーとは、イングランドやカナダの紋章に見られるディファレンシングの方法で、イングランドの例では、家の男子の紋章に長男はレイブル、次男はクレセント、三男はミューレットといったように、決まったチャージを加えます。

忠誠のチーフ

市民の紋章、特にドイツの紋章学においては、シールドの上部に「忠誠のチーフ (chief of allegiance)」が加えられることがあります。これは、チーフの位置に統治する政府の紋章を縮小して配置したものです。また、イタリアの多くの紋章は、ナポリ王または神聖ローマ帝国の紋章の流れを汲むチーフを持ち、それぞれ教皇派と皇帝派を意味します。

参考文献

コウブチ紋章資料館
紋章学総合サイト
中世ヨーロッパの風景 「紋章について」
Dragon's Lair「ヨーロッパ紋章学」

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