ツイ・ハークのゴーストホーム/13日の金曜日の妻たちへ

ツイ・ハークのゴーストホーム/13日の金曜日の妻たちへ：現代と幽玄が交錯する香港奇譚

1988年、香港で公開された『ツイ・ハークのゴーストホーム/13日の金曜日の妻たちへ』（原題：黑心鬼）は、特撮の巨匠ツイ・ハークがその技を駆使した作品です。現代劇の枠組みの中に、幽玄で奇妙な世界観を見事に融合させた、ユニークな物語が展開します。

物語の始まり：冥土からの使者

物語は、心優しい老人が子供を救うために身代わりとなり命を落とす場面から始まります。冥土に送られた彼は、そこで閻魔の従弟と出会います。なんと、生前善行を重ねた彼ともう一人の男は、自然のバランスを崩した罰として天国へ行くことができず、妖怪として俗世を彷徨うことを命じられるのです。天国へ行くための条件は、200年間妖怪として人間界をさまよい、その間に9人の人間を呪い殺すこと。こうして二人はキョンシーの姿で人間界へ送り返されます。

現代香港の日常：金銭と人間模様

舞台は香港。日本人向けの観光ガイドとして働くチャン・ホンタイは、ギャンブル好きの妻チョイ・ファと、金遣いの荒い弟シン・スンのせいで、常に金欠に悩んでいました。彼はリベートに手を染めていましたが、それがバレそうになり、弟に責任を押し付けてクビを免れます。一方、弟のシンは家賃滞納で追い出され、恋人に振られるというどん底の状況に陥ります。

雨の中、行き場を失ったシンは兄チャンに助けを求め、彼の家に身を寄せます。そこでシンは、姉チョイに瓜二つの亡き妹ランの幽霊をチョイと間違えてしまい、幽霊と暮らすことになります。最初は戸惑っていたシンとチョイでしたが、次第に奇妙な共同生活が始まります。

妖怪との出会い：三つの願い

ある日、チャンは骨董品店を訪れ、そこで奇妙な尿瓶を借りることになります。用を足そうとしたチャンは、尿瓶の中から小便まみれの老人が飛び出してくるという衝撃的な出来事を体験します。なんと、その老人は200年前から人間界を彷徨う赤妖怪だったのです。赤妖怪はチャンに、三つの願いを叶えてくれると言い出します。チャンは現金と宝くじを願い、願いは叶えられますが、赤妖怪は再び尿瓶の中に戻ってしまいます。チャンはいつでも妖怪を呼び出せるよう、尿瓶を持ち帰ります。

幽霊と人間の葛藤

一方、シンは亡き妹ランの幽霊に悩まされるようになります。ランはシンに執着し、彼を困らせます。人間と幽霊、そして妖怪という異形の存在が入り乱れる現代香港の日常は、ユーモラスでありながら、どこか切ない雰囲気を漂わせています。

ツイ・ハークの特撮と融合した世界

この映画の見どころは、なんといってもツイ・ハークが担当した特撮です。現代香港の街並みを舞台に、幽霊や妖怪といった超現実的な存在が織りなす不思議な世界観は、観客を魅了します。現代劇と幻想的な世界の絶妙なバランス、そして人間模様の機微が丁寧に描かれた、忘れがたい香港映画です。

スタッフ

監督：チェン・フォンイー
脚本：マンフレッド・ウォン
製作：ウォン・ジン
撮影監督：チャン・トンチン
編集：チュン・クォクエン
武術指導：リー・キン・チュー
* 特撮：ツイ・ハーク

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