ツェリン・オーセル

ツェリン・オーセルの概要

ツェリン・オーセル（tse ring od zer、茨仁唯色）は、1966年にチベット自治区のラサで生まれたチベット人の作家です。現在は中華人民共和国・北京市に住んでいます。出身地は東部チベットのカム地方・デルゲで、彼女は中国国籍を持つ一方で、自身の文化とルーツを大切にしています。彼女は著名な中国の作家である王力雄の妻でもあります。

名の表記

チベット文化においては姓が存在しないため、ツェリン・オーセルは「tse ring od zer」全体が彼女の名となります。時には前半部を省略し「od zer（唯色）」と名乗ることもあります。この他、英語では「woeser」と表記されることもあり、彼女の作品では「ツェリン・オーセル」および「オーセル」が並行して用いられる場合があります。

略歴

彼女は1988年に四川省の西南民族学院で漢語文学を学び、卒業後は「甘孜報」という地元の新聞で編集者および記者として活動を始めました。1990年にはラサの「西蔵文学」誌に移籍し、そこでの経験が彼女の執筆活動に重要な影響を与えました。1999年には王力雄との出会いを契機に、彼女の創作活動が本格的に始まります。

2003年には著書『西蔵筆記』を発表したものの、その内容が原因で発禁処分を受け、「西蔵文学」誌を失職しました。それ以降はフリーの作家として活動を続けています。王力雄との結婚は2004年に実現し、家庭と仕事を両立させながら活発な執筆活動を展開しました。

2013年には、ツェリン・オーセルが中国当局によって自宅軟禁されていることが報じられ、彼女の活動が制約されることとなりました。夫である王力雄ともに外出が制限された状況です。

作品の概要

ツェリン・オーセルの著書の中でも特に注目されているのが『殺劫』です。この作品は、彼女の亡父であるツェリン・ドルジェが撮影した文化大革命期のチベットの写真を基に、その写真の被写体や他者からのインタビューを通じて詳細な背景を探るルポルタージュとなっています。当初は父の遺品を王力雄に託そうとしましたが、彼の助言を受けて自ら写真調査に取り組む決意をしました。

2006年に出版された『殺劫』は、台湾から中国語版が刊行され、続いて2008年には日本語版が発表されました。この本は単なる写真集ではなく、深い社会的・文化的背景を持つ作品です。続編ともいえる『西蔵記憶』では、ラサを中心にした文化大革命についてのルポルタージュが展開されており、インタビューが中心となっています。

著作リスト

彼女の作品は、中国本土のみならず海外でも評価されています。代表的な著作を挙げれば、

• - 『西蔵在上』 青海民族出版社（1999年）
• - 『西蔵筆記』 花城出版社（2003年）
• - 『名為西蔵的詩』 大塊文化出版股份有限公司（2006年）
• - 『殺劫』 大塊文化出版股份有限公司（2006年）
• - 『西蔵記憶』 大塊文化出版股份有限公司（2006年）
• - 共著として『聴説西蔵』ががあり、王力雄との共著となっています。このように、彼女の著作はチベットの社会や歴史を深く掘り下げるものとなっています。

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