ツチカメムシ科

ツチカメムシ科（Cydnidae）

ツチカメムシ科は、カメムシ目に属する昆虫の一群です。その名の通り、主に地面の上や土の中に生息しており、一般的なカメムシとは異なる独特の形態や生態が見られます。

特徴

ツチカメムシ科に属するカメムシの多くは、全体に丸みを帯びた楕円形をしており、ずんぐりとして厚みのある体つきが特徴です。典型的なカメムシに見られるような、体の側面が大きく張り出した形ではなく、体表は滑らかで目立った突起や棘はありません。その姿はしばしば、甲虫のように見えることもあります。

体色は茶色から黒といった地味なものが一般的で、多くは光沢を帯びています。ただし、ベニツチカメムシ亜科のように鮮やかな赤色を呈する種や、白や黄色の斑紋を持つもの、あるいは金属光沢を示す例外も存在します。体表は滑らかでありながらも、長い毛に覆われている種が多く見られます。

大きさは種によって幅広く、体長わずか2mm程度の微小なものから、20mmを超える大型種まで存在します。

頭部は前方が横に広がって平たくなっている種が多いです。触角は通常5節からなります。

土壌での生活に適応した構造が脚に見られます。それぞれの脚の基節の先端には、比較的太い棘状の毛が櫛のように並んだ「基節櫛（コキサルコーム）」と呼ばれる構造を持っています。また、脛節には多くの棘が並んでいるのが一般的です。さらに、前脚の脛節の先端部分が平たくなり、土を掘るのに適したへら状や櫛状に変形している種が多く、これらの特徴が地中での活動に役立っていると考えられます。

生態

ツチカメムシ科のほとんどの種は、地表や土壌中で生活しています。しかし、一部には植物の上で生活する種も知られています。食性は植食性で、植物の根や、落下した果実、地面に落ちた種子などから口吻を刺して汁を吸います。ただし、具体的な食性や生態については、まだ詳しく分かっていない点が多いのが現状です。

興味深い生態として、ホシツチカメムシ亜科やベニツチカメムシ亜科の一部の種では、母親が卵や孵化した幼虫を保護する「亜社会性」を示すことが知られています。これは、カメムシとしては比較的珍しい行動様式です。

分類

ツチカメムシ科は世界中に分布しており、現在までに約100属、930種ほどが記録されています。分類体系については伝統的に8つの亜科にまとめられることが多いですが、研究者によって意見が分かれることもあり、例えばベニツチカメムシ亜科を独立した科として扱うべきだという説も提唱されています。

日本国内からは、これまでに16属23種が確認されています。代表的な亜科や種としては、ヒラタツチカメムシ亜科、ジムグリツチカメムシ亜科、ツチカメムシ亜科（ツチカメムシ、コツチカメムシなど）、ホシツチカメムシ亜科（ミツボシツチカメムシ、マダラツチカメムシなど）、ベニツチカメムシ亜科（ベニツチカメムシなど）などが挙げられます。

利害

人間との関わりにおいて、特に重要な利害をもたらす種は知られていません。

出典

本記事の記述は、以下の文献を参考にしています。

石川忠他編, 『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』, 全国農村教育協会, 2012年
安永智秀他, 『全農協 観察と発見シリーズ カメムシ博士入門』, 全国農村教育協会, 2018年

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