ツバサゴカイ

ツバサゴカイ (Chaetopterus cautus)

ツバサゴカイは、ツバサゴカイ科に属する多毛類で、干潟の環境に適応した生物です。この種は体長が5-25cmに達し、特徴的なU字型の巣穴を泥の表面に掘り、その口が地表から長く突き出ます。ほかの種とは異なり、ツバサゴカイは主に日本全体に広く分布し、特に北海道から沖縄まで見ることができます。特有の生態を持ち、一般的に故郷とも言える干潟に生息しています。

特徴

ツバサゴカイは、体が大きく3つの部位から成り立っています。前体部には口前葉があり、その周囲には短い副感触手が存在します。体節は9（-10）に分かれており、それぞれには疣足があり、物理的な移動や摂食に寄与しています。中体部では、特に特徴的な足枝が左右に伸びており、扇状体と呼ばれる構造が形成されます。扇状体は左右の疣足が融合したもので、摂食時に重要な役割を果たします。

後体部は13-60の体節から成り、各節には疣足が見られます。これらの疣足は特に腹側で横に広がり、棲管に固定するために役立ちます。

生息地と生態

ツバサゴカイは潮間帯から水深10mまでの範囲に生息し、底質は砂泥から礫砂でできた地域に棲管を構えます。この棲管は柔らかい膜質で形成されており、U字型の構造を持っています。棲管の口近くは白く見え、埋没した部分は褐色を帯び、水生生物の残骸や藻類が付着しています。棲管の口には集中した膜があり、新たな水流を生み出すことで、ツバサゴカイはプランクトンを効果的に捕まえます。

食物摂取においては、ツバサゴカイの中体部にある扇状体を使って水流を作り、プランクトンや有機物の捕獲を行います。また、前体部から分泌される粘液は、デトリタスを捕えてそのまま口へ運ぶ手段となります。

繁殖

本種は雌雄異体であり、繁殖期は明確ではありませんが、一般に夏前後と考えられています。成熟した個体では後体部の色が異なり、雄は乳白色、雌は一方でピンク色を呈します。卵の直径は約100μmで、繁殖に際しては棲管内に卵を分散させます。

分布と現状

以前はツバサゴカイの一種が広範囲に分布すると考えられていましたが、近年ではその分布と種の区分が見直されています。現在は日本全域に分布し、少ないながらも生息地の減少が問題視されています。特に干潟の開発や護岸工事によって、生息環境が減少していることが挙げられます。

現在、ツバサゴカイの生息地が消滅したため、関東地方やその他の地域で見られる個体群は限られています。これは、干潟環境の重要性を改めて認識させる理由となっています。過去には普通種と見なされていたために、その減少が問題視されることが少なかった歴史もありますが、今後の保護活動が望まれています。

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