ツーハンデッドソード

ヨーロッパにおいて、主に両手で扱われる大型の剣は、一般的にツーハンデッドソードと呼ばれます。この呼称は、特にルネサンス期以降に登場した、より洗練された大型剣にも用いられます。ドイツ語ではツヴァイヘンダーとして知られ、特に悪名高き傭兵部隊ランツクネヒトが使用したことで有名です。

特徴と種類

戦闘目的で製造されたツーハンデッドソードは、通常120cmから180cm程度の全長を持ち、重量は1.5kgから3kgほどが一般的でした。しかし、特注品の中には全長が2メートルを超える巨大なものも存在しました。この巨大な武器を効果的に振るうには、相当な腕力と高度な剣術の技術が不可欠でした。日本の騎馬武者が多用し、軽量化が進んだ大太刀とは異なり、ツーハンデッドソードは主に歩兵によって用いられました。そのため、2メートルを優に超えるような超大型剣は、実際の戦闘での運用には適さなかったとする見方が有力ですが、この点については専門家の間でも意見が分かれています。現存する剣の中には、小型の実用剣と大型の儀礼剣、あるいは装飾のある実用剣と簡素な儀礼剣との区別がつきにくい場合があり、どれが実戦用であったかを明確に特定することは困難です。しかし、市川定春氏やマーティン・J・ドアティ氏のような研究者は、2メートルを超える両手剣も実戦で使用された可能性を指摘しています。彼らの説の一つとして、こうした大型剣がパイクやハルバードといった長柄武器の柄部分を切り落とすために特注されたという考えがあります。

戦場での役割と戦術

当時の剣士たちは、ツーハンデッドソードが多数の敵を相手にする状況や、長柄武器が密集する戦列（いわゆる「槍衾」）に対抗する上で非常に有効な武器であると認識していました。特に、パイクやハルバードで形成された強固な槍衾を突破するための強力な武器として重用されました。また、重要な軍旗や指揮官を護衛する精鋭部隊の主要武器としても使用されています。槍衾を破るという役割においては、ハルバードも同様に用いられましたが、ランツクネヒトのような歩兵部隊は、突破力において両手剣を優先したと伝えられています。

危険な任務と検証

敵の槍衾に切り込む部隊は、極めて危険な任務を遂行しました。そのため、彼らは「倍給兵」として通常の倍の給料を得るか、あるいは志願者、くじ引きで選ばれた者、さらには生還すれば罪が免除されるという条件を与えられた囚人で構成されることもありました。この任務の死亡率が非常に高かったことは言うまでもありません。
両手剣やハルバードがパイクの先端や柄を斬り落とすために使用されたという説については、現代の検証が行われています。この検証によると、剣を遠端で持った場合、特に軽量に作られていない限り、パイクの柄を完全に切断することは現実的ではないという結果が得られています。大きく弾くことはできても、斬り飛ばすのは困難だろうとされています。しかしながら、日本の戦国時代には、朝倉軍の兵が大太刀を用いて織田軍の槍の柄を斬り落とし苦戦させた記録や、倭寇が大太刀で明軍の槍の柄を斬り、これに対抗するため明軍が柄を容易に斬られない狼筅を用いた記録が残されており、東洋における大型剣での柄切断の実例が存在することも事実です。

甲冑への対応と剣術

ツーハンデッドソードは、板金鎧の発達という時代の変化に対応して進化した武器でもあります。両手で力強く振り回される両手剣は、板金鎧以外の鎧であれば切断するほどの破壊力を持ち、突進してくる馬の脚をも叩き斬ることが可能でした。しかし、どれほど鋭利な剣であっても、物理的に板金鎧を一刀両断することは不可能であることが計算によって示されています。
このため、板金鎧で全身を固めた相手に対しては、別の戦術が用いられました。西洋剣術には、剣身の刃がついていない根元部分（リカッソ）を両手で持って短く構え、短い鋼鉄の槍のように甲冑の隙間を突く「ハーフソード」や、剣身を片手で持ち、柄や鍔（つば）を使ってハンマーのように打撃を与える「殺撃（モードシュラッグ）」といった、打撃力の高い技術が存在し、これらは重装甲の敵に対して非常に有効でした。両手剣は白兵戦、特に重装甲でない敵との戦闘でその威力を発揮しましたが、全身板金鎧の相手には直接的な斬撃や打撃は効果が薄く、前述のような専門技術や刺突に頼る必要がありました（ただし、重装甲に対しては斬撃・打撃が無効で刺突が有効とする説に加え、複合装甲には打撃も有効とする説もあります）。

構造と歴史的背景

両手剣の登場は13世紀に遡り、14世紀以降になると刀身は次第に長くなる傾向が見られました。中には、刀身の根元部分に刃をつけないリカッソ構造を持つものも登場し、これにより刀身を持って短く構える戦術が可能になりました。このリカッソ部分に手をかけ短く持つことで、短い槍のように敵を突いたり、至近距離での斬撃を行ったりすることができ、両手剣を帯びた剣士は、あらゆる距離での戦闘において柔軟に対応することができました。
ツーハンデッドソードの製造には、高品質な材料と熟練した鍛冶職人の技術が不可欠であり、製造コストは非常に高価でした。刀身が長くなるほど、その価格も上昇しました。
歴史的には、騎士が馬から降りて戦う機会が増えるにつれて両手剣の使用が増加し、15世紀から17世紀にかけて一つの流行期を迎えました。特に15世紀に全身板金鎧が完成形に近づくと、これを叩き壊すような威力を持つツヴァイヘンダーが出現し、ランツクネヒトの主要武器として定着しました。14世紀以降、西洋で全身板金鎧が普及すると、それまで一般的だった盾は次第に用いられなくなり、甲冑に対抗する手段として、両手剣の他に、両手斧、長いリーチを持つ槍、ポール・アックス、ポール・ハンマーといった長柄武器が、下馬した騎士や重装歩兵によって広く用いられるようになりました。これらの武器の中でも、ポール・アックスやポール・ハンマーは特に好まれたとされています。

評価

戦場でも決闘の場でも、両手剣はその汎用性の高さから使い勝手の良い武器と認識されていました。相手の装備の種類や、距離を取って戦うか、あるいは組み打ちに至るような接近戦かに関わらず、器用に扱うことができ、多様な技を繰り出すことが可能でした。また、強力な打撃と突きを繰り出せる点も評価されていました。槍やポールアックスのような長柄武器は安全な距離を保って戦うのに適していましたが、狭く混雑した戦場のような状況では、両手剣はその真価を発揮することができたのです。

もう一度検索