ツール・ド・フランス1912

ツール・ド・フランス1912は、記念すべき第10回目の大会として、1912年6月30日から7月28日にかけて開催されました。全15ステージ、総距離5319kmに及ぶ過酷な道のりを、選手たちは駆け抜けました。

この大会の特筆すべき点は、総合成績の決定方法にポイント制が採用されていたことです。各ステージの着順に応じてポイントが与えられ、その合計ポイントが最も少ない選手が総合優勝となる仕組みでした。しかし、このポイント制が、思わぬドラマを生み出すことになります。

ウジェーヌ・クリストフは、今大会の山岳ステージにおいて圧倒的な強さを見せ、第3、第4、第5ステージを制覇しました。もし総合時間制であれば、クリストフの総合優勝は疑いなかったでしょう。しかし、ポイント制の下では、ステージ優勝だけでは総合首位を確約するものではありませんでした。

実際、クリストフが総合首位に立ったのは、大会期間中わずか1回にとどまりました。これは、ステージ優勝以外の順位が影響し、ポイントが加算されたためです。総合時間制であれば圧倒的な強さを見せたクリストフが、ポイント制によって不遇をかこつという、なんとも皮肉な結果となりました。

ポイント制は、1904年の大会で発生した違反行為を受けて導入されたものでした。しかし、今大会の結果は、ポイント制の弊害を浮き彫りにすることとなりました。ステージ優勝者の総合順位が必ずしも高くなるとは限らないという、この矛盾点が問題視されたのです。

結局、ツール・ド・フランスの運営側は、ポイント制の廃止を決定しました。そして、翌1913年のツール・ド・フランスからは、再び総合時間制が採用されることになりました。以降、今日に至るまで、総合成績は時間制によって決定されています。

ツール・ド・フランス1912は、ポイント制がもたらした悲劇と、その後の時間制への移行という、歴史的な転換点となった大会として記憶されています。

外部リンク
第10回ツール・ド・フランス1912（フランス語）

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