ティアーズ・フォー・フィアーズ

ティアーズ・フォー・フィアーズ（Tears for Fears）

ティアーズ・フォー・フィアーズは、1980年代に数々のヒット曲を放ったイギリスの2人組バンドです。ローランド・オーザバルとカート・スミスによって結成され、その音楽性は時代とともに変化を遂げました。

バンドの成り立ちと音楽性

初期の彼らは、シンセサイザーを多用したサウンドで、エレポップの範疇に位置づけられていました。しかし、その音楽は単なる流行に留まらず、繊細な歌詞とマッチした独自のサウンド・メイクが特徴でした。その後、ローランド・オーザバルのギターサウンドを核に、よりロック色の強いサウンドへと移行し、良質なブリティッシュ・ロックを奏でるバンドとして確立されました。

バンド名の由来は、心理学者アーサー・ヤノフの著書『Prisoners of Pain』に登場する章題「Tears for Fears（恐れのための涙）」から取られています。ヤノフの提唱した原初療法は、「心の痛みや恐怖を抑え込まず、子供のように叫び、泣く」ことを推奨しており、初期のティアーズ・フォー・フィアーズの歌詞には、「Pain（痛み）」や「Shout（叫び）」といった言葉が頻繁に登場します。

デビューから世界的な成功へ

ローランドとカートは、それぞれの両親の離婚という共通の経験を持ち、13歳の時に出会い、音楽活動を共に始めました。彼らの初期の作品には、離婚家庭で育った子供たちの心の痛みや悲しみが色濃く反映されています。

TFFとして活動を開始する以前には、グラデュエイトやネオンといったバンドで活動していました。1981年にシングル「悩める子供達」でデビュー後、1983年に発表したファースト・アルバム『ザ・ハーティング』が全英アルバムチャートで1位を獲得し、一躍注目を集めました。

1984年にリリースされたシングル「シャウト」は、全英2位、全米1位を記録し、世界的な大ヒットとなりました。続く「ルール・ザ・ワールド」や「ヘッド・オーヴァー・ヒールズ」も立て続けにヒットし、アルバム『シャウト』は全世界で1000万枚近くを売り上げました。1985年には来日公演も実現し、その人気を不動のものとしました。

メンバー間の不和とカート・スミスの脱退

度重なるツアーで疲弊したローランドとカートは、次第に不仲となり、解散を意識するようになります。1989年にリリースされたアルバム『シーズ・オブ・ラヴ』は、オリータ・アダムスをゲストに迎え、新たなサウンドを追求しましたが、そのツアー中に二人の不和が表面化し、カートはTFFを脱退してしまいます。

ローランドによるソロ・プロジェクトへ

カートの脱退後、ローランドはTFFの名前を引き継ぎ、ソロ・プロジェクトとして活動を継続します。1993年にはアルバム『ブレイク・イット・ダウン・アゲイン』をリリースし、カート脱退後の新たなTFFサウンドを提示しました。

再結成、そして現在

長年の不仲を経て、ローランドとカートは和解し、2004年には約15年ぶりとなるアルバム『Everybody Loves A Happy Ending』をリリースし、再結成を果たします。その後も、ライブ活動や新作のリリースをマイペースに続け、2022年には17年ぶりとなるアルバム『ザ・ティッピング・ポイント』をリリースし、再び大きな成功を収めました。

ティアーズ・フォー・フィアーズは、80年代の音楽シーンを代表するバンドの一つとして、今もなお多くのファンに愛され続けています。彼らの音楽は、時代を超えて人々の心に響き、新たな世代にも影響を与え続けています。

ディスコグラフィー

ザ・ハーティング (1983)
シャウト (1985)
シーズ・オブ・ラヴ (1989)
ブレイク・イット・ダウン・アゲイン (1993)
キングス・オブ・スペイン (1995)
Everybody Loves A Happy Ending (2004)
ザ・ティッピング・ポイント (2022)
Songs for a Nervous Planet (2024)

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