ティグラン・マンスリアン

ティグラン・マンスリアンは、1937年1月27日、レバノンの首都ベイルートに生を受けた、アルメニアを代表する現代作曲家の一人である。

彼の人生における重要な転機の一つは、幼少期に経験した移住であった。1947年、マンスリアンは家族と共に、生まれ故郷であるレバノンを離れ、祖国アルメニアへと移住した。そして、1956年からはアルメニア共和国の首都であるエレバンに恒久的に居を定め、この地をその後の彼の長い音楽活動、すなわち創作と教育における揺るぎない拠点とすることとなる。エレバンという文化的に豊かな環境は、若きマンスリアンの音楽的な感性と才能を育む上で極めて重要な役割を果たした。

彼の本格的な音楽教育は、まずエレバン市内にあるロマノス・メリキアン音楽大学で開始された。1956年から1960年までの四年間にわたり、彼はこの教育機関で、当時教鞭を執っていたエドゥアルド・バグダサリャンに師事した。バグダサリャンの指導のもと、マンスリアンは作曲家として不可欠な基礎、すなわち音楽理論、和声、対位法といった分野における確かな知識と技術を身につけた。この期間の集中的な学びは、彼のその後の高度な専門教育への重要な準備期間となった。

基礎教育を修了したマンスリアンは、さらなる専門的な学びを追求するため、1960年にエレバン音楽院に入学した。このアルメニアにおける主要な音楽教育機関で、彼は作曲の分野において、傑出した作曲家であり指導者でもあったラザルス・サリャンに師事した。1960年から1965年までの五年間、サリャンの薫陶を受け、マンスリアンは自身の独自の音楽語法を探求し、作曲家としての個性と表現技法を確立していった。同時に、彼はエレバン音楽院の大学院課程にも進学し、1960年から1967年までの七年間、音楽学的な研究にも精力的に取り組み、幅広い知見を獲得した。

エレバン音楽院での一連の教育課程を終えた後、ティグラン・マンスリアンは自身の母校において、今度は教える立場となった。1967年から1986年までの約20年間にわたり、彼はエレバン音楽院で近代音楽理論の教授として教鞭を執り、アルメニアの次世代を担う数多くの作曲家や音楽家たちを育成した。さらに、1987年からは作曲の指導も開始し、長年にわたる自身の創作経験と深い音楽的知識を学生たちに伝えた。彼の教育者としての熱意と貢献は、アルメニア国内の音楽教育界において多大な影響を与えた。

教育活動と並行して、マンスリアンはエレバン音楽院の運営においても重要な役割を担った。特に、1992年から1995年までの三年間は、同音楽院の校長（Rector）という極めて重要な職を務めた。この期間、彼は教育者、行政官として、学校全体の教育方針の策定、カリキュラムの改善、そして学校運営体制の強化に尽力し、アルメニアの音楽教育機関の発展に大きく貢献した。

近年、ティグラン・マンスリアンは、長年にわたる音楽教育の現場からは身を引き、現在は自身のキャリアの主要な活動である作曲に全力を注いでいる。エレバン音楽院での指導者としての豊富な経験、そして自身の探求する音楽表現をさらに深く追求すべく、今日まで精力的に創作活動を続けている。アルメニア音楽界における彼の存在は、今なお極めて大きい。

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