ティライユール

ティライユールとは

ティライユール（tirailleur）は、フランス語で「散兵」を意味する言葉で、元々はナポレオン戦争時代に、縦隊の先頭で偵察や戦闘を行う軽歩兵部隊を指しました。彼らは、敵の陣形を乱し、主要部隊の進軍を助ける役割を担っていました。

19世紀以降、ティライユールという名称は、フランス陸軍において、植民地出身の兵士や、軽歩兵として配属された本国（メトロポリテーヌ）の部隊にも使われるようになりました。これらの部隊は、その出自や役割に応じて多様な歴史を刻みました。

ナポレオン時代のティライユール

フランス革命からナポレオン時代にかけて、ティライユールは当初、軽歩兵による小競り合いを指す軍事用語として使われていました。ナポレオン1世の時代には、近衛兵の一部としてティライユール連隊が編成され、最盛期には約16個の連隊が存在しました。これらの連隊は、ボルティジュール連隊と共に、ヤングガードに編入されることが多かったようです。

1814年、ナポレオン失脚後の王政復古期に、近衛兵のティライユール連隊は解散しました。しかし、1815年の百日天下でナポレオンが復権すると、ティライユール連隊は再編され、1から8までの連隊が編成されました。このうち、ワーテルローの戦いに参加したのは第1連隊と第3連隊のみでした。ナポレオンの再退位に伴い、ティライユール連隊を含む近衛部隊は再び解散しました。

植民地軍としてのティライユール

19世紀以降、ティライユールの名称は、フランス植民地軍の現地兵を指すようになりました。特に、北アフリカや西アフリカの植民地出身の兵士が、ティライユール部隊に編入され、フランスのために戦いました。これらの植民地兵は、第一次世界大戦や第二次世界大戦においても、フランス軍の重要な戦力として活躍しました。彼らの勇敢な戦いぶりは、後世に語り継がれています。これらのティライユール部隊は、アルジェリア、チュニジア、セネガルなど、様々な地域に存在しました。特に、アルジェリアのティライユールは「アルジェリア狙撃兵」として知られていました。

現代のティライユール

現在、フランス陸軍には第1狙撃兵連隊(1er régiment de tirailleurs)というティライユールの連隊が一つだけ残っています。この連隊は、1964年から1994年の間は第170歩兵連隊として知られていました。さらに、1964年以前は第7アルジェリア狙撃兵連隊(7e régiment de tirailleurs algériens)という名称でしたが、アルジェリアの独立に伴い、フランス本土に移転し、現在の名称になりました。

関連事項

ティライユールの歴史は、フランスの植民地主義、フランス外人部隊、グミエ（モロッコ人補助兵）、ハルキス（アルジェリア人補助兵）など、フランスの軍事史や植民地史と深く関わっています。

参考文献

Pierre Dufour. Le 1er régiment de tirailleurs: tirailleurs de l'armée d'Afrique, les oubliés de l'histoire. Panazol, France: Lavauzelle, 1999.
R. Huré. L'Armée d'Afrique 1830–1962. Paris: Charles-Lavauzelle, 1977.
Digby Smith. Napoleon's Regiments: Battle histories of the Regiments of the French Army, 1792-1815. London: Greenhill Books and Mechanicsburg, Pennsylvania: Stackpole Books, 2000.

外部リンク

Armée d'Afrique

この文章は、ティライユールの歴史的変遷と、その役割について詳しく解説しています。読者の皆様の理解の一助となれば幸いです。

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