テイクオーバーゾーン

2019年に製作され、翌2020年6月に劇場公開された日本映画、『テイクオーバーゾーン』。
本作は、第2回ジュブナイル脚本大賞においてグランプリを受賞した岩島朋未氏によるシナリオを基に映像化されました。
メガホンをとったのは山嵜晋平監督です。

物語の舞台は、山嵜監督の出身地でもある古都・奈良。
家庭に複雑な事情を抱えながらも、ひたすらにグラウンドを走り続ける14歳の少女、沙里の日々が、まるでドキュメンタリーを追うかのような生々しさと洗練された演出で丹念に描かれます。
監督は、受賞シナリオの映画化にあたり「面白かったが、同時に難しさも感じた」と語っています。
特に、物語の結末を飾る2分22秒にも及ぶワンカットシーンは必見とされ、公開時には多くの観客から賞賛の声が寄せられました。

2019年に開催された第32回東京国際映画祭では、『日本映画スプラッシュ』部門へ正式出品され、国内外から注目を集めました。
主演を務めた吉名莉瑠さんは、この映画祭で設けられた新たな才能に贈られる賞、『東京ジェムストーン賞』に輝いています。
吉名さんはオーディションを経て主人公・沙里役に抜擢され、撮影当時は中学三年生で、本作が自身にとって初の主演作品となりました。
複雑な家庭環境に置かれた14歳の少女が抱える葛藤や、そこからの成長を見事に演じ切った彼女の演技は高く評価され、伊藤沙莉さん、佐久間由衣さん、ヨセフィン・フリーダ・ペターセンさんと共に受賞を果たしました。
共演者や山嵜監督は、吉名さんについて「器用ではないけれど、芝居に嘘がない」とその才能を語っています。

ストーリー

沙里が11歳の時、両親は離婚。母親は、沙里が溺愛する弟を連れて家を出ていきました。
それから3年、沙里はだらしなく自堕落な生活を送る父親のもとで、部費さえも滞納するような厳しい経済状況の中で暮らしています。
中学の陸上部ではエースとして圧倒的な実力を持ちながらも、どこか周囲に対して傍若無人な態度をとる沙里。
そんなある日、彼女はスーパーマーケットで偶然にも大好きな弟と再会します。
しかし、弟の傍らには別れた母親、そして沙里にとって犬猿の仲である陸上部の部長、雪菜の姿がありました。
予期せぬ再会と、複雑に入り組んだ人間関係に直面し、感情の行き場を失った沙里はどこへ向かうのか。
何からか逃げるように走り続けてきた少女のたどり着く先は――。
本作は、困難な現実に立ち向かう14歳の少女の心の動きと成長を描いた、ヒューマンタッチの物語です。

登場人物

田中 沙里（演：吉名莉瑠）
本作の主人公。11歳での両親の離婚後、父親と暮らす14歳。陸上部ではエースとして活躍する一方で、反抗的な態度をとる問題児。
庄司 雪菜（演：糸瀬七葉）
沙里が所属する陸上部の部長であり、クラスでは学級委員を務める優等生。沙里とは激しく対立する関係にあり、彼女の父親は沙里の母親と再婚しています。
高須 光星（演：森山瑛）
沙里のボーイフレンド。
田中 謙一（演：川瀬陽太）
沙里の父親。娘との生活を顧みず、だらしない生活を送っています。
庄司 芙美（演：内田慈）
沙里の母親。離婚後、雪菜の父親と再婚しました。
雪菜の父親（演：合田雅吏）

主なスタッフ

監督：山嵜晋平
脚本：岩島朋未
プロデューサー：山本和夫、上野境介
撮影：山村卓也
照明：神野誉晃
録音：池田紗月
スタイリスト：米村和晃
ヘアメイク：中野悠花
編集：山嵜晋平
助監督：大城義弘

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