テスコ (楽器メーカー)
テスコ（TEISCO）は、かつて日本に存在した楽器のブランドおよびその製造・販売を担った企業です。活動期間は1948年頃から1985年頃までで、特にエレキギターの分野で知られていました。ギター以外にも、シンセサイザーやアンプなども手がけていました。
テスコの歴史は、1946年に創業された「アヲイ音波研究所」に始まります。この会社は二度の社名変更を経て、1964年に「テスコ株式会社」となりました。創業当初の1948年には、「Teisco」ブランドとしてハワイアンギター（電気スティールギター）と楽器アンプを発売。1952年にはエレキギターの製造に着手しました。1956年に社名を「日本音波工業」と改めています。
1960年代に入ると、世界的なエレキギターブームの到来とともにテスコは大きく成長します。国内だけでなく海外への輸出も拡大し、1961年には子会社としてテスコ弦楽器を設立。1964年には再び社名を「テスコ」に戻し、日本の代表的なエレキギターブランドとしての地位を確立しました。全盛期とされる1965年頃には、テレビ番組「エレキ・トーナメント・ショーGO!GO!GO!」を提供するなど、国内のエレキブームを牽引する存在でした。また、当時内製のエレキギターを持たなかったヤマハが、テスコ製品専用のカタログを作成して自社販売網で取り扱うほど、その勢いは顕著でした。この時期に大量に輸出されたテスコのギターは、デヴィッド・リンドレーなどの著名なコレクターに評価され、後の1990年代のビザールギターブームへと繋がっていきます。
しかし、1966年に国内の第1次エレキブームが一段落すると、テスコは経営危機に陥ります。同年末、主要取引先であった河合楽器製作所（カワイ）の系列会社となり、カワイの電子楽器製造部門の一部に組み込まれました。当時のテスコブランドの知名度は非常に高かったため、ブランド名と独自の製品ラインナップは維持され、関連会社であるテスコ商事やテスコ弦楽器が企画・開発した製品、あるいはカワイ製のテスコードなどが引き続き販売されました。
1969年頃になると、アメリカでの第1次エレキブームが終息し、日本でもグループ・サウンズブームが沈静化して世間の関心がフォークギターへと移り始めます。このような状況の中、資本関係のあったモリダイラ楽器の独立や長野楽器の倒産を発端として、テスコ弦楽器やその取引先が次々と連鎖倒産しました（いわゆる1969年のエレキギター連鎖倒産）。さらに、1970年代前半にはテスコ商事も解散。これらの出来事により、テスコの活動を支えていた体制が崩壊します。その影響は製品にも表れ、1974年のカタログからは、テスコ独自のデザインを持つユニークなギターが姿を消し、代わりに当時の流行であったギブソンやフェンダーのコピーモデルが登場するようになりました。
テスコブランドは、1970年代後半から1980年代半ばにかけて徐々に市場から姿を消していきます。そして1988年頃、河合楽器製作所が電子ピアノ事業に注力する戦略のもと、静岡県森町にあったメルヘン楽器（メルヘンピアノ）と統合され、河合楽器の電子ピアノ生産のみを行うようになり、テスコブランドは完全に消滅しました。
テスコ株式会社自体は、その後も河合楽器の連結子会社として存続しましたが、1990年に設立され2004年に吸収合併された株式会社カワイウッドに最終的に吸収合併されました。本社所在地は、1960年代半ばには東京都北区浮間でしたが、後に埼玉県南埼玉郡菖蒲町へ移転しています。
テスコは、黎明期の電子楽器開発にも貢献しています。1958年には、国産最初期の真空管式単音電子オルガン「スーパーエレガン」を発売し、日本の電子楽器製品の先駆けの一つとなりました。同時期に電子オルガン開発に着手していた河合楽器製作所は、テスコの技術に着目して提携を結び、1960年には河合初の電子オルガン「ドリマトーン」とテスコの製品「テスコP-1」が共同で開発・発売されました。その後、テスコは自社ブランドのコンボオルガン「テスコード」(TEISCO Teischord) を国内外で販売。海外では、Teiscoブランドの他、KAWAI/KingstonブランドやOEMブランドとしても展開されました。
シンセサイザーについても、1977年のシンセサイザーブームの中で、KAWAI/TEISCO初のシンセサイザー「Synthesizer-100F (S100F)」が登場し、一時的にTEISCOブランドが復活しました。その後、製品ラインはKAWAIブランドに統合されていきましたが、ハイブリッドシンセサイザーK3や、4ボイスアナログシンセサイザーSX400などを開発しました。
PA機器としては、ビートルズの日本公演の写真にテスコロゴのモニターが確認されており、当時の音楽シーンを支えていた一面も窺えます。
ブランド消滅後も、テスコのギター、特にそのユニークなデザインを持つモデルは「ビザールギター」として世界中に多くのコレクターが存在し、根強い人気を保っています。2015年には、テスコ製品の一つである「Spectrum 5」が日本の楽器店から限定復刻販売されるなど、現代においてもその魅力は再評価されています。
テスコは、日本の楽器産業史において、特にエレキギターの大衆化と輸出拡大に貢献した重要な存在であり、その革新的なデザインと個性的なサウンドは今もなお多くの音楽ファンやコレクターに語り継がれています。
創業から成長、そして変遷
テスコの歴史は、1946年に創業された「アヲイ音波研究所」に始まります。この会社は二度の社名変更を経て、1964年に「テスコ株式会社」となりました。創業当初の1948年には、「Teisco」ブランドとしてハワイアンギター（電気スティールギター）と楽器アンプを発売。1952年にはエレキギターの製造に着手しました。1956年に社名を「日本音波工業」と改めています。
1960年代に入ると、世界的なエレキギターブームの到来とともにテスコは大きく成長します。国内だけでなく海外への輸出も拡大し、1961年には子会社としてテスコ弦楽器を設立。1964年には再び社名を「テスコ」に戻し、日本の代表的なエレキギターブランドとしての地位を確立しました。全盛期とされる1965年頃には、テレビ番組「エレキ・トーナメント・ショーGO!GO!GO!」を提供するなど、国内のエレキブームを牽引する存在でした。また、当時内製のエレキギターを持たなかったヤマハが、テスコ製品専用のカタログを作成して自社販売網で取り扱うほど、その勢いは顕著でした。この時期に大量に輸出されたテスコのギターは、デヴィッド・リンドレーなどの著名なコレクターに評価され、後の1990年代のビザールギターブームへと繋がっていきます。
しかし、1966年に国内の第1次エレキブームが一段落すると、テスコは経営危機に陥ります。同年末、主要取引先であった河合楽器製作所（カワイ）の系列会社となり、カワイの電子楽器製造部門の一部に組み込まれました。当時のテスコブランドの知名度は非常に高かったため、ブランド名と独自の製品ラインナップは維持され、関連会社であるテスコ商事やテスコ弦楽器が企画・開発した製品、あるいはカワイ製のテスコードなどが引き続き販売されました。
衰退とブランド消滅
1969年頃になると、アメリカでの第1次エレキブームが終息し、日本でもグループ・サウンズブームが沈静化して世間の関心がフォークギターへと移り始めます。このような状況の中、資本関係のあったモリダイラ楽器の独立や長野楽器の倒産を発端として、テスコ弦楽器やその取引先が次々と連鎖倒産しました（いわゆる1969年のエレキギター連鎖倒産）。さらに、1970年代前半にはテスコ商事も解散。これらの出来事により、テスコの活動を支えていた体制が崩壊します。その影響は製品にも表れ、1974年のカタログからは、テスコ独自のデザインを持つユニークなギターが姿を消し、代わりに当時の流行であったギブソンやフェンダーのコピーモデルが登場するようになりました。
テスコブランドは、1970年代後半から1980年代半ばにかけて徐々に市場から姿を消していきます。そして1988年頃、河合楽器製作所が電子ピアノ事業に注力する戦略のもと、静岡県森町にあったメルヘン楽器（メルヘンピアノ）と統合され、河合楽器の電子ピアノ生産のみを行うようになり、テスコブランドは完全に消滅しました。
テスコ株式会社自体は、その後も河合楽器の連結子会社として存続しましたが、1990年に設立され2004年に吸収合併された株式会社カワイウッドに最終的に吸収合併されました。本社所在地は、1960年代半ばには東京都北区浮間でしたが、後に埼玉県南埼玉郡菖蒲町へ移転しています。
電子楽器への取り組み
テスコは、黎明期の電子楽器開発にも貢献しています。1958年には、国産最初期の真空管式単音電子オルガン「スーパーエレガン」を発売し、日本の電子楽器製品の先駆けの一つとなりました。同時期に電子オルガン開発に着手していた河合楽器製作所は、テスコの技術に着目して提携を結び、1960年には河合初の電子オルガン「ドリマトーン」とテスコの製品「テスコP-1」が共同で開発・発売されました。その後、テスコは自社ブランドのコンボオルガン「テスコード」(TEISCO Teischord) を国内外で販売。海外では、Teiscoブランドの他、KAWAI/KingstonブランドやOEMブランドとしても展開されました。
シンセサイザーについても、1977年のシンセサイザーブームの中で、KAWAI/TEISCO初のシンセサイザー「Synthesizer-100F (S100F)」が登場し、一時的にTEISCOブランドが復活しました。その後、製品ラインはKAWAIブランドに統合されていきましたが、ハイブリッドシンセサイザーK3や、4ボイスアナログシンセサイザーSX400などを開発しました。
その他の活動と現在の評価
PA機器としては、ビートルズの日本公演の写真にテスコロゴのモニターが確認されており、当時の音楽シーンを支えていた一面も窺えます。
ブランド消滅後も、テスコのギター、特にそのユニークなデザインを持つモデルは「ビザールギター」として世界中に多くのコレクターが存在し、根強い人気を保っています。2015年には、テスコ製品の一つである「Spectrum 5」が日本の楽器店から限定復刻販売されるなど、現代においてもその魅力は再評価されています。
テスコは、日本の楽器産業史において、特にエレキギターの大衆化と輸出拡大に貢献した重要な存在であり、その革新的なデザインと個性的なサウンドは今もなお多くの音楽ファンやコレクターに語り継がれています。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。