テミス族

テミス族

太陽系の小惑星帯の中でも、特に外側の領域に分布する小惑星族の一つに「テミス族」があります。この族は、日本の天文学者、平山清次によって発見・分類された「平山族」と呼ばれる小惑星族群の一つとしても知られています。

テミス族の小惑星は、太陽から平均しておよそ3.13天文単位（約4億6800万キロメートル）の距離に集中的に存在しています。その分布は比較的明確な境界を持ち、多数の小惑星から構成される中心部（コア）と、その周辺に存在する少数の小惑星からなる領域に分かれていることが観測によって示されています。この中心部には、族の名前の由来となった小惑星である(24) テミスが含まれています。

テミス族を構成する小惑星の大部分はC型小惑星に分類されます。C型小惑星は、太陽系形成初期の物質が比較的そのまま残されていると考えられており、水や有機物を豊富に含むとされる炭素質コンドライトを主成分としていると考えられています。このような組成を持つテミス族の存在は、小惑星帯の組成分布や太陽系初期の環境を知る上で重要な情報を提供しています。

このテミス族は、小惑星帯に存在する数多くの小惑星族の中でも最大規模の一つであり、またその存在が比較的早期に認識された小惑星族でもあります。平山清次による小惑星族の発見は、小惑星帯の研究に大きな進歩をもたらしました。2005年の時点で、テミス族に属するとされる小惑星は535個以上が確認されており、その規模の大きさを物語っています。

テミス族には、学術的に興味深い様々な天体が含まれています。族名の由来である(24) テミスをはじめとして、(62) エラト、(90) アンティオペ、(104) クリメネ、(171) オフィーリア、(468) リーナ、(526) イエナ、(846) リッペルタなどがこの族の代表的な小惑星として挙げられます。

さらに特筆すべき点として、テミス族の中には、小惑星としての性質と彗星としての性質の両方を持つ「彗星・小惑星遷移天体」と呼ばれる珍しいタイプの天体が含まれている例があります。例えば、(7968) エルスト・ピサロ彗星、(118401) LINEAR、(300163) 2006 VW139といった天体が、この族に属しながら彗星活動を示したことが観測されています。これらの天体の存在は、テミス族が単なる小惑星の集まりではなく、より多様な天体を含む可能性を示唆しており、小惑星と彗星の境界領域の研究においても重要な手がかりを提供しています。

テミス族は、その明確な分布、豊富なC型小惑星の存在、そして遷移天体を含む多様性から、小惑星帯の進化や太陽系形成過程を理解するための重要な研究対象となっています。その研究は、小惑星帯の歴史や、ひいては太陽系における水や有機物の起源といった根源的な問いに迫る上で、今後も続けられていくでしょう。

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