テルル酸

テルル酸：性質、反応、そして関連化合物

テルル酸は、化学式Te(OH)₆で表される化合物です。白色の固体で、水に溶けやすく安定しています。結晶構造は、菱面体晶と単斜晶の2種類が存在しますが、いずれも正八面体のTe(OH)₆分子から構成されています。

テルル酸の製法

テルル酸は、テルルまたは二酸化テルルを、過酸化水素、三酸化クロム、過酸化ナトリウムなどの強力な酸化剤で酸化することで合成されます。例えば、二酸化テルルと過酸化水素の水溶液を反応させることで、以下の反応式のようにテルル酸が生成します。

TeO₂ + H₂O₂ + 2H₂O → Te(OH)₆

10℃以下の低温でテルル酸水溶液を結晶化させると、四水和物Te(OH)₆・4H₂Oが得られます。この四水和物は、酸化剤として作用し、その酸化還元電位は+1.02Vと比較的高い値を示します。

H₆TeO₆ + 2H⁺ + 2e⁻ ⇌ TeO₂ + 4H₂O

テルル酸の性質と反応

無水テルル酸は100℃の空気中で安定していますが、それ以上の温度に加熱すると脱水し、ポリメタテルル酸((H₂TeO₄)₁₀)やアロテルル酸((H₂TeO₄)₃(H₂O)₄)などの多様な化合物へと変化します。これらの化合物の性質は完全に解明されているわけではありませんが、テルル酸が脱水する過程で生成する中間体や副生成物と考えられています。

テルル酸は二価の弱酸であり、強塩基と反応してテルル酸塩を、弱塩基と反応したり、テルル酸塩を加水分解させたりすることでテルル酸水素塩を生成します。テルル酸の塩は、[Te(O)(OH)₅]⁻や[Te(O)₂(OH)₄]²⁻などのアニオンを含んでいます。Rb₆[TeO₅][TeO₄]のような固体構造においては、TeO₄²⁻イオンの存在も確認されています。

300℃以上に強加熱すると、テルル酸はα-TeO₃へと変化します。また、ジアゾメタンと反応させると、ヘキサメチルエステルTe(OMe)₆が生成します。多くのテルル酸とその塩は、テルルが6配位した構造をとっています。これは、テルル酸マグネシウム(MgTeO₄)のように、正八面体のTeO₆を含む化合物でも同様です。

テルル酸のその他の形態

[硫酸]のテルルアナログであるメタテルル酸(H₂TeO₄)は、いまだに単離・同定されていません。アロテルル酸は、およそ(H₂TeO₄)₃(H₂O)₄の組成を持つとされていますが、その性質は不明な点が多く、Te(OH)₆と(H₂TeO₄)の混合物である可能性も示唆されています。

その他のテルルの酸

テルルの酸化数+4の化合物である[亜テルル酸]も知られていますが、その性質は十分に解明されていません。また、[テルル化水素]は不安定な気体であり、水に溶かすとテルル化水素酸となります。

まとめ

テルル酸は、その多様な結晶構造、酸化還元反応、そして脱水反応など、興味深い性質を持つ化合物です。さらに、その塩や関連化合物は、様々なアニオン構造を示し、その化学的性質は未だ研究段階にある部分も多く、さらなる探究が期待される分野です。

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