テレンス・ハインズ

テレンス・ハインズ氏（1951年3月22日生まれ）は、アメリカ合衆国の神経学者であり、科学と非科学的な主張に関する批判的な著作で知られるサイエンスライターです。彼はニューヨークのペース大学で神経学の教授を務める傍ら、ニューヨーク医科大学でも非常勤教授として教鞭を執っています。

ハインズ氏の学歴は多岐にわたります。デューク大学で文学士号を取得した後、オレゴン大学で科学分野の修士号および博士号を取得しました。このアカデミックな背景は、彼の後の科学的懐疑主義に基づく執筆活動に大きな影響を与えています。彼は、超常現象や疑似科学の科学的調査を行うための委員会であるサイコップ（CSICOP、現在はCSI）の会員としても活動しており、その活動は彼の研究姿勢と深く結びついています。

彼の最もよく知られた著作は『ハインズ博士「超科学」をきる』（原題: Pseudoscience and the paranormal: a critical examination of the evidence）です。この本の中で、ハインズ氏は主にアメリカ国内で流布している様々な疑似科学や超常現象の主張を、科学的な視点から詳細に検証し、批判的に論じています。

ハインズ氏は、真の科学と疑似科学を明確に区別することの重要性を強調しています。彼によれば、疑似科学はしばしば、既存の物理学の法則と矛盾するような、検証不能あるいは反証困難な仮説に基づいています。科学が新しい証拠が出現すれば理論を修正し、絶えず自己更新していく性質を持っているのに対し、疑似科学はそうした柔軟性を欠き、新たなデータや発見に対してもその主張を変えない傾向がある、と彼は指摘します。

また、彼は超常現象と疑似科学との境界線が曖昧であることにも言及しています。たとえば、千里眼や予知といった超能力が存在するならば、それを持った個人がカジノで連戦連勝したり、ロトくじで連続して高額当選したりするなど、社会経済的なレベルで統計的に有意な影響が観察されるはずです。しかし、現実にはそのような現象は確認されていません。ハインズ氏は、こうした具体的な例を挙げることで、超常現象的主張が現実の法則といかに乖離しているかを示しています。

彼の著書は、日本語にも翻訳され、日本の読者にも広く読まれています。『ハインズ博士「超科学」をきる』のほか、続編や改訂版の翻訳も出版されており、日本における疑似科学や超常現象への懐疑的な視点を広める上で重要な役割を果たしました。

テレンス・ハインズ氏は、神経学の専門知識と科学的思考の枠組みを用いて、広く受け入れられがちな非科学的な情報や主張に対し、冷静かつ批判的な検証を促す活動を続けています。彼の著作と研究は、科学的リテラシーの向上に貢献するものです。

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