テロワーニュ・ド・メリクール

アンヌ＝ジョセフ・テロワーニュ・ド・メリクール

アンヌ＝ジョセフ・テロワーニュ・ド・メリクール（Anne-Josèphe Théroigne de Méricourt、1762年8月13日 - 1817年6月8日）は、フランス革命前期における主要な女性の一人であり、女子革命家として知られています。彼女は、1790年代のパリで活躍し、自由の象徴として「自由のアマゾンヌ」と称された女性です。テロワーニュは、驚くべき経歴を持ち、娼婦としての過去からフランス革命における活動家への転身を果たしました。

幼少期と娼婦時代

テロワーニュは、現在のベルギーにあたるリュクサンブール州のマルクール村で生を受けました。彼女の家庭は農業を営んでいましたが、父親の死後、継母との関係が悪化し、11歳のときに家を出ます。その後、彼女は様々な職を経験し、1782年にはロンドンに渡ります。ロンドンで彼女は「カンピナド伯爵夫人」と名乗り、高級娼婦として成功を収めました。多くの貴族や資産家との関係を築き、その中には後のイギリス国王であるジョージ4世も含まれていたと言われています。

彼女は、自立した生活を築く一方で、自身の兄弟を助けようとする姿勢も見せていました。彼女には特定の男性に依存することなく、経済的に自立する力がありました。また、歌手を目指してイタリアで修行を行ったこともありましたが、長続きはしませんでした。

革命への参加

1789年にフランス革命が始まるとテロワーニュは再びパリに戻り、バスティーユ襲撃などの歴史的な出来事に遭遇します。彼女は男装し、乗馬服姿でパリの街を歩くことに決めました。その姿は歴史家によって「英雄的な美しさ」と称賛され、彼女は革命思想を掴むべく国民議会の傍聴にも通います。特に、娼婦として得た資産を元に多くの革命家を支援し、サロンを営むことでその知識とネットワークを広げていきました。

テロワーニュは、数々の集会にも参加し、女性の社会進出を呼びかけ、彼女の影響力が広がる一方で、王党派ジャーナリストからの批判や中傷も増えていきました。これには彼女の過去の経歴が取り上げられたり、恋愛関係を結んでいるとする噂が流されることもありました。

逮捕・釈放と絶頂期

1791年、王党派からの攻撃を避けるためにベルギーに帰省中、彼女はオーストリアによって逮捕され、クフシュタインに送られます。彼女はマリー・アントワネットに対する陰謀への関与で起訴されました。約9ヶ月後に釈放され、パリに戻った際、彼女は「自由のアマゾンヌ」として熱烈に歓迎され、再び革命活動を開始します。この経緯が彼女に革命家としての名声を与え、自身が改革の一部であると自覚するようになりました。

没落

1793年に入ると、フランスは厳しい状況に直面し、テロワーニュもその影響を受けることになります。彼女の思想が次第にジロンド派寄りであったため、ジャコバン派との対立が激化し、ついには暴行を受ける事件が起こりました。この事件が彼女の精神に深い傷を残し、最終的には精神的な病を抱えることとなり、様々な精神病院を転々とします。最期はパリのサルペトリエール療養所で孤独な死を迎えました。

彼女の生涯は、革命の激動の中で波乱に満ち、華やかさと悲劇が同居したものでした。

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