テンノウメ

テンノウメについて

テンノウメ（天の梅、学名：Osteomeles anthyllidifolia var. subrotunda）は、バラ科に属する常緑の低木であり、特に日本の屋久島やトカラ列島などの特定の地域で見られます。高さは約0.1～0.5メートルと低く、匍匐性のため地面に広がるように生育します。また、幹は木質化しており、強い生命力を持っています。

特徴

テンノウメの葉は小さく、羽状に分かれた複葉が互生しており、全体で長さは6センチメートル未満です。葉軸からは狭い翼が展開しており、通常5〜8対の小葉が対生しています。各小葉は全縁で、長さは4〜8ミリメートルほどです。葉や花序、果実には白い伏毛が密生していますが、トゲは見られません。この植物は、同じ環境下で生育するミカン科のヒレザンショウに似ていますが、テンノウメの葉には特有の香りや腺点がなく、見分けることができます。

花は5弁から成り、直径は約1センチメートルで、ウメの花に似た白色をしています。果実は球形で直径6ミリメートル、熟すと冬に赤から黒紫色に変わります。この果実もまた魅力の一つであり、観賞用として人気があります。

分布と生育環境

この植物は、屋久島やトカラ列島の一部、さらには先島諸島や大東諸島にも分布しています。ただし、屋久島では絶滅が記述されています。国外では台湾や中国の広東省、さらにはハワイでも見られることがあります。テンノウメは、海岸の岩場や隆起サンゴ礁の上、さらには草地で育つことが多いです。

利用

テンノウメは主に庭木や盆栽としての利用が見込まれていますが、環境の変化や盗掘によってその個体数は減少傾向にあります。そのため、環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類に指定されています。

近縁種

テンノウメ属には、他にも近縁種として小笠原諸島に見られるタチテンノウメ（O. schwerinae）やシラゲテンノウメ（O. lanata）が存在します。これらの種は、時に同じ種として扱われることもあり、日本産のテンノウメ属の研究は今後の再検討が必要とされています。

参考文献

• - 米倉浩司; 梶田忠 (2003). テンノウメ Osteomeles anthyllidifolia (Sm.) Lindl. var. subrotunda (K.Koch) Masam. BG Plants 和名－学名インデックス. 2024年7月1日閲覧。
• - 環境省 (2020). 環境省レッドリスト2020.
• - 林将之; 名嘉初美『沖縄の身近な植物図鑑』ボーダーインク、2022年。
• - 大川智史; 林将之『ネイチャーガイド 琉球の樹木』文一総合出版、2016年。
• - 池田博 ほか『フィールド版 日本の野生植物』平凡社、2021年。
• - 中西弘樹『フィールド版 日本の海岸植物図鑑』トンボ出版、2020年。

外部リンク

• - テンノウメ 琉球の植物データベース 国立科学博物館
• - テンノウメ 日本の植物たち
• - テンノウメ 野の花賛花 - 自生の姿を追って

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