ディアナ・バルモリ

ディアナ・バルモリ（Diana Balmori、1932年 6月4日 - 2016年）は、国際的に著名なランドスケープ・都市デザイナーであり、自身の設計事務所であるバルモリ・アソシエイツ（Balmori Associates）の創設者です。

スペイン北部の都市ヒホンで生まれたバルモリは、言語学者の父と音楽学者の母のもとで育ちました。幼少期の大半をスペインで過ごした後、家族と共にアルゼンチンへ移住します。幼い頃から豊かな想像力と創造性に恵まれ、芸術的な才能を示した彼女は、両親の勧めもあり、文学、詩、ラテン語、ギリシャ語といった古典分野に加え、絵画、ピアノ演奏、ダンス、歌唱など、非常に幅広い分野の学びを深めました。これらの多様な経験と思索は、後に彼女がデザインの世界で独自の視点を確立し、成功を収める上での重要な基盤となりました。

16歳で高校を卒業すると、建築を学ぶことを志し、アルゼンチンのトゥクマン国立大学建築学科に進学します。大学での学びを終えた後、アメリカ合衆国へ渡り、さらなる学術的な探求を続けました。カリフォルニア大学ロサンゼルス校（UCLA）大学院では都市史を専攻し、優秀な成績で課程を修了、博士号を取得しました。この学術的な背景は、彼女のデザインアプローチに歴史的、理論的な深みをもたらすことになります。

学位取得後、バルモリは教育者としてのキャリアもスタートさせます。ニューヨーク州立イェール大学ではランドスケープ史に関するセミナーを担当し、その後はラドクリフ・カレッジでランドスケープ・アーキテクチャーの教鞭を執りました。教育活動と並行して、著名な建築家シーザー・ペリ率いる事務所、シーザー・ペリ＆アソシエイツ（Cesar Pelli & Associates, CPA）にパートナーとして迎え入れられます。CPAでは社内にランドスケープ部門を新設し、建築設計とランドスケープデザインの統合的なアプローチを推進しました。1990年に自身の事務所バルモリ・アソシエイツを設立し独立するまで、CPAのパートナーとして精力的に活動を続けました。

バルモリ・アソシエイツ設立後、彼女は都市のインフラ再生、環境デザイン、公共空間設計、文化施設周辺の景観デザインなど、多岐にわたるプロジェクトを手がけます。彼女のデザイン哲学は、自然と人工構造物の境界を曖昧にし、持続可能性と創造性を両立させることに重点を置いていました。特に、水辺空間の活用、廃材や既存のインフラの再利用、エコロジカルな視点を取り入れた革新的なアプローチで知られています。幼少期からの幅広い学びが、多様な専門分野を横断する彼女独自の視点とデザインスタイルを育みました。

彼女の代表的なプロジェクトには、以下のようなものが挙げられます。

ハイライン（High Line）（ニューヨーク、2004年）: 廃止された高架貨物線を見事に緑豊かな線形公園へと再生させた、都市におけるインフラ再利用の象徴的なプロジェクト。
ダイアナ妃記念噴水（Diana, Princess of Wales Memorial Fountain）（ロンドン、2002年）: ハイドパークに設置された、自然石を用いた追悼のための水景施設。
国立国際美術館（The National Museum of Art, Osaka）（大阪、2004年）: 日本の文化施設におけるランドスケープデザイン。
NTT本社ビル（東京、1995年）: 日本での初期の主要なプロジェクトの一つ。
ビルバオ・ウォーターフロント（Bilbao Waterfront）（スペイン・ビルバオ、2004年）: 都市の再生における水辺空間のデザイン。
プレーリー・ウォーターウェイ（Prairie Waterway）（ミネソタ州ファーンミングトン、1996年）: 環境再生を目的としたプロジェクト。

これらのプロジェクトは、彼女の活動が世界各地に及び、都市景観、文化施設、記念碑、環境再生など、様々なスケールと性質の空間を手がけたことを示しています。

ディアナ・バルモリは、教育者、研究者、そして実践者として、ランドスケープデザイン分野に新たな視点をもたらし、特に都市環境におけるランドスケープの可能性を大きく広げました。2016年、アメリカ・ニューヨークにてその生涯を終えましたが、彼女が生み出した革新的な空間は、今日なお多くの人々に影響を与え続けています。

関連項目
シーザー・ペリ

参考文献
ランドスケープデザイン145号（2009年10月23日）
* プロセスアーキテクチュア No.133「ディアナ・バルモリのランドスケープ」（1997年11月）

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