ディオタッレーヴィの聖母

『ディオタッレーヴィの聖母』

『ディオタッレーヴィの聖母』、イタリア語では「La Madonna Diotallevi」として知られるこの作品は、ルネサンスの巨匠ラファエロ・サンツィオが1502年頃に描いた絵画です。この作品は『幼い洗礼者ヨハネを祝福する聖母子』という副題でも呼ばれており、現在ベルリンの美術館に収蔵されています。

絵画は、聖母マリアが膝に幼いイエス・キリストを抱き、右側にいる幼い洗礼者ヨハネを優しく抱き寄せる構図が特徴です。洗礼者ヨハネは両手を胸に当て、キリストを救い主として受容する姿勢を示しています。一方で、幼児キリストはヨハネに祝福を与えている様子が見受けられ、聖母マリアはその光景を静かに見守っています。

聖母は半身の姿で描かれ、その頭部はやや小さく見え、不自然な印象を与えます。このような表現はゴシック様式の影響を感じさせるものです。背景には、北方ルネサンスを想起させる自然風景が描かれており、当時の技術の進化を反映しています。

この絵は、ロンドンにあるナショナル・ギャラリーの『アンシデイの祭壇画』と左右反転した類似性が見られます。しかし、ラファエロがこの作品を描いた時期は、彼の師匠であるピエトロ・ペルジーノや先輩の画家ピントゥリッキオの影響を受けており、成熟したスタイルには至っていません。

特に幼児キリストのポーズはペルジーノの『慰めの聖母』からの影響が明らかであり、洗礼者ヨハネもピントゥリッキオの特徴を反映しています。この作品における全体的な構成は、ピントゥリッキオの他の作品と密接に関連しており、特に幼い洗礼者ヨハネの描写において、ラファエロならではの甘美な表情が印象的です。

ラファエロの制作過程については、美術史家ロベルト・ロンギが注目しており、彼は聖母マリアの表現に古風さを感じ、そのため作品が段階的に制作されたと考えました。ロンギによると、ラファエロは最初に聖母マリアを描き、その後しばらく放置してから1504年から1505年の間に完成させたという主張がされています。

絵画の来歴については、その初期の情報は不明ですが、19世紀にはリミニのアウディファチェ・ディオタッレーヴィ侯爵のコレクションに属していたことが知られています。1842年に、ベルリン国立美術館の館長が侯爵からこの絵を購入したことで、今日私たちが見ることができるようになりました。この作品は、第二次世界大戦の際にはベルリンの高射砲塔に移され、戦争後はアメリカ合衆国によって一時的に保管されましたが、その後無事にベルリンに戻されました。

最近では、2020年から2021年にかけて、ラファエロの没後500年を記念した特別展がリミニで開催され、約180年ぶりに故郷に帰ったことが話題となりました。この展覧会では、ラファエロの他の作品や、ディオタッレーヴィ侯爵が所有していた地元の画家の作品とともに展示され、訪れた人々の目を楽しませました。

『ディオタッレーヴィの聖母』は、ラファエロの作品の中でも特に重要な位置を占め、彼の絵画技法や美的感覚の進化を示すものです。この作品を通じて、彼の芸術がどのように発展していったのかを垣間見ることができます。

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