ディス・イズ・ザ・ワン

Utada - This Is The One

『ディス・イズ・ザ・ワン』（This Is The One）は、日本のシンガーソングライターUtada（宇多田ヒカル）が2009年にリリースした英語による2枚目のオリジナルアルバムです。2009年3月から5月にかけて、日本とアメリカ合衆国で発売されました。

リリースと背景

前作『EXODUS』から約4年半ぶりのUtada名義でのアルバム。日本での発売は当初3月4日の予定でしたが、制作の遅れにより3月14日に変更されました。異例の土曜日発売となったことも話題を呼びました。アメリカでは、デジタルダウンロード版が3月24日、CD版が5月12日にリリースされました。

アルバムはアメリカのiTunes Store Album Chart（US）で総合19位、ポップス部門2位を記録し、日本人アーティストとして当時最高の記録を打ち立てました。ビルボード200では、デジタル配信のみで178位に初登場し、CD発売後には69位まで上昇。これは、LOUDNESS以来23年ぶりの日本人アーティストによるトップ100入りという快挙でした。

制作の舞台裏

Utadaは2007年秋頃から、次作の制作について言及しており、日本語アルバム『HEART STATION』と並行して英語アルバムの制作を進めていたことが伺えます。『HEART STATION』に収録された「Prisoner Of Love」は元々英語のアルバム用に制作された楽曲であり、アルバムリリース時のインタビューでも、英語アルバムの制作について語っていました。

2008年5月には「アップル・アンド・シナモン」というタイトルがネット上で流出。その後、2009年1月に公式サイトでファーストシングル「カム・バック・トゥ・ミー」を発表し、アルバムのリリースを正式に発表しました。

アルバムには全10曲が収録されており、スターゲイトやトリッキー・スチュワートといった著名なプロデューサーが参加。スターゲイトは6曲、トリッキー・スチュワートは4曲をプロデュースしました。Utadaは、トリッキー・スチュワートとは時間をかけて議論を重ねましたが、スターゲイトとはデータのやり取りが中心だったそうです。スターゲイトは、この制作スタイルを「未来的だ」と評しました。

Utada自身は、本作を自身のデビューアルバムのような気持ちで制作し、完成度の高い、聴きやすい作品に仕上がったと語っています。原点回帰し、飾り気のない、素直で自信とユーモアに溢れた作品であり、前作に比べて自分が何を表現したいのかが明確になったと述べています。

楽曲解説

オン・アンド・オン (On & On): 独立記念日にアトランタでレコーディングされた楽曲で、賑やかな雰囲気が反映されています。「ゲイ・パレード」という歌詞も特徴的。
メリークリスマス・ミスター・ローレンス - FYI - Merry Christmas Mr. Lawrence: 坂本龍一の「Merry Christmas, Mr. Lawrence」をサンプリングした楽曲。スターゲイトからの強い要望で制作され、アルバムの方向性を決定づけました。Utadaは、力強く、メッセージ性のある、今の自分に合った曲だと語っています。
アップル・アンド・シナモン (Apple And Cinnamon): タイトルが先行して話題となったミドルナンバー。制作に苦労はなく、ボーカルもほぼデモテープのものが使用されています。
テイキング・マイ・マネー・バック (Taking My Money Back)
ディス・ワン (クライング・ライク・ア・チャイルド) (This One (Crying Like A Child))
オートマティック・パートII (Automatic Part II): タイトルは後付けで、「宇多田ヒカル」と「Utada」の区別をなくし、どちらも同じであるという意図が込められています。アルバム全体を繋ぐインタールードのような楽曲。
ダーティー・デザイア (Dirty Desire): アメリカ限定で配信されたシングル。リミックスバージョンも制作されました。
ポッピン (Poppin'): 仮タイトルは「オースティン・パワーズ・ソング」。
カム・バック・トゥ・ミー (Come Back To Me): アルバムからのファーストシングル。ラジオで聴いた時に耳に残るキャッチーさと深さを兼ね備えた楽曲を目指しました。
メ・ムエロ (Me Muero): スペイン語で「死んじゃいそう」という意味。ラテン調の楽曲で、Utada自身が最も気に入っており、ふざけているけれど洗練されていると語っています。

収録曲

日本版と海外版では曲順が異なり、それぞれボーナストラックが収録されています。アメリカ版には、「Simple and Clean」や「Sanctuary」といったゲーム「キングダム ハーツ」シリーズで使用された楽曲も収録されています。

まとめ

『ディス・イズ・ザ・ワン』は、Utadaの新たな挑戦が詰まった意欲作であり、彼女の音楽性の幅広さを示すアルバムと言えるでしょう。

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