ディペンドラ・ビール・ビクラム・シャハ

ディペンドラ・ビール・ビクラム・シャハ・デーブは、1971年6月27日にネパール王国の当時の皇太子ビレンドラ（後の第10代国王）の息子として生まれました。彼はネパール王家の後継者として育ちましたが、その生涯はわずか30年足らずで劇的な終焉を迎えました。

彼が歴史に名を刻むことになったのは、2001年6月1日に発生した、いわゆるネパール王族殺害事件においてです。この夜、カトマンズのナラヤンヒティ王宮で、ディペンドラは銃を手にし、家族に向けて発砲したと広く信じられています。この悲劇的な出来事により、父であるビレンドラ国王をはじめ、母であるアイシュワリヤ王妃、弟、妹、その他の近親者を含む9人の王族が命を落としました。事件後、ディペンドラは自らも命を絶とうとしたとの見方があり、重傷を負った状態で発見されました。

事件発生の翌日、意識不明の状態にあったディペンドラは、ネパール王国の新しい国王として即位が宣言されました。これは、彼がビレンドラ国王の正当な後継者であったためです。しかし、彼は負った傷から回復することなく、国王に即位してからわずか3日後の2001年6月4日に息を引き取りました。その短い在位期間は、わずか72時間でした。

ディペンドラの崩御に伴い、当時摂政を務めていた叔父のギャネンドラが新たな国王として即位しました。この一連の出来事は、ネパール国民に大きな衝撃と悲しみを与え、王国の将来に暗い影を落としました。

ネパール王族殺害事件の真相については、公式な調査結果が発表されていますが、国民の間では様々な憶測や陰謀論が囁かれ、完全に納得のいく説明とはなっていない側面もあります。ディペンドラがなぜこのような凶行に及んだのか、動機についても諸説あり、個人的な悩みや結婚問題、王室内の不和などが挙げられることがありますが、その真実は完全には解明されていません。

ディペンドラの短い生涯と、彼が引き起こしたとされる未曽有の悲劇は、ネパールの歴史における最も衝撃的な出来事の一つとして記憶されています。彼の死後、叔父ギャネンドラ国王の治世は続きますが、王制そのものの存続が問われる時代へと向かっていきます。ディペンドラの生涯は、彼の意思とは無関係に、ネパール王国の運命を大きく左右するきっかけとなったと言えるでしょう。

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