ディボーシング・ジャック

ディボーシング・ジャック：予測不能な騒動劇

1998年公開の映画『ディボーシング・ジャック』は、北アイルランドを舞台にしたクライムコメディです。コリン・ベイトマンの小説『ジャックと離婚』を原作とし、酒とセックス・ピストルズをこよなく愛する二流タブロイド誌のコラムニスト、ダン・スターキーの騒動劇を描いています。

物語は、英国の首相選挙を間近に控えた北アイルランドで幕を開けます。ダンは、公園でナンパした女子大生マーガレットとの浮気が妻のパトリシアにバレ、家を追い出されてしまいます。行き場を失ったダンは、マーガレットの家に転がり込むことに。マーガレットから誕生日プレゼントとして贈られたクラシック音楽全集のカセットテープ「D」を手にしたダンは、その夜、マーガレットと甘いひとときを過ごします。しかし、ダンが軽食を買いに外出している間に、マーガレットは何者かに襲われ、「ディボース・ジャック」という言葉を残して命を落とします。さらに、ダンは現場で不審な人物に飛びかかり、マーガレットの母親をも死なせてしまうのです。

翌日、自宅に戻ったダンは、案内役を務めるアメリカ人ジャーナリストのパーカーと共に、有力な首相候補ブリンの邸宅を取材します。その最中、政治家の妻が殺害されたというニュースが流れ、ダンとパーカーは、何者かに追われる身となります。カセットテープを売って金を手に入れたダンは、パトリシアに連絡を取りますが、彼女も何者かに拉致されてしまいます。ダンは銃撃を受け足を負傷しますが、尼僧姿のリー・クーパーに助けられ治療を受けます。しかし、マーガレットの元恋人でありテロリストであるパット・キーガンに捕まり、パーカーは拷問の末に殺されてしまいます。さらに、パトリシアもダンの前で拷問を受けますが、再びリー・クーパーが現れ、二人を窮地から救い出します。

物語は、次々と明かされる「ディボース・ジャック」の意味、ダンが追われる理由へと繋がっていきます。軽妙なユーモアとスリリングな展開が絶妙に織り交ぜられた本作は、予測不能な展開と、登場人物たちの魅力的なキャラクター、そして北アイルランド独特の社会情勢が複雑に絡み合い、最後まで目が離せない作品となっています。

『ディボーシング・ジャック』は、単なるクライムコメディにとどまらず、政治、テロ、そして人間関係といった様々な要素が複雑に絡み合った、奥深い物語です。ユーモラスな語り口とスリリングな展開のバランスが絶妙で、観る者を飽きさせません。また、北アイルランドの独特な雰囲気も、作品の魅力を高めています。

この映画は、デヴィッド・シューリスの演技が英国インディペンデント映画賞主演男優賞を受賞するなど、高い評価を得ています。さらに、ポルト国際映画祭でもCritics' AwardとDirectors' Week Awardを受賞しています。北アイルランド問題やジャガイモ飢饉といった歴史的背景も、作品理解を深める上で重要な要素となっています。一見コミカルなストーリーの中に、社会問題や人間ドラマが巧みに織り込まれた『ディボーシング・ジャック』は、忘れがたい映画体験を提供してくれるでしょう。

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