ディヴェルティメント

ディヴェルティメント：愉悦を奏でる音楽

ディヴェルティメントは、18世紀中頃に隆盛を極めた器楽組曲の一様式です。その語源はイタリア語の「divertire（楽しませる、愉快にさせる）」に由来し、音楽そのものが持つ明るさ、軽妙さ、そして何よりも聴衆を楽しませることを目的としていました。日本語では「嬉遊曲（きゆうきょく）」とも訳され、その名の通り、喜びや遊び心に満ちた音楽体験を提供します。

誕生の背景と特徴

ディヴェルティメントは、貴族の邸宅における食卓、娯楽、社交、祝賀といった様々な場で演奏されました。そのため、特定の楽器編成に縛られることなく、三重奏、四重奏、弦楽合奏、管楽合奏、小規模なオーケストラなど、多様な編成で演奏されました。また、形式や楽章数も自由であり、作曲家の創意工夫が活かされる余地が大きかったことも特徴です。

ディヴェルティメントとよく似た音楽形式としてセレナーデが挙げられますが、セレナーデが主に屋外での演奏を目的としていたのに対し、ディヴェルティメントは室内での演奏を想定して作曲されました。そのため、より親密で、洗練された雰囲気を有していると言えるでしょう。

作曲家と作品

18世紀には、ハイドンやモーツァルトといった巨匠たちが数多くのディヴェルティメントを作曲し、この形式の発展に大きく貢献しました。しかし、19世紀に入ると、ディヴェルティメントは徐々に廃れていきました。しかし、20世紀に入り、バルトークなどの作曲家によって再び見直され、新たな作品が生まれています。

ディヴェルティメントの代表的な作品例

ハイドン：室内楽曲161曲、ピアノ曲5曲
ミヒャエル・ハイドン：室内楽形式5曲
モーツァルト：多数
シューベルト：ハンガリー風ディヴェルティメント（ピアノ連弾）
ソル：6つのディヴェルティメント（ギター）
ルーセル：ディヴェルティスマン
イベール：室内管弦楽のためのディヴェルティスマン
ストラヴィンスキー：『妖精の接吻』からのディヴェルティメント
バルトーク：弦楽のためのディヴェルティメント
パーシケッティ：吹奏楽のためのディヴェルティメント
バーンスタイン：管弦楽のためのディヴェルティメント
ギーゼキング：クラリネットと弦楽四重奏のためのディヴェルティメント
鈴木輝昭：ディヴェルティメント(チェロ合奏のための)
ヴェースピ：ディヴェルティメント

これらの作品は、それぞれ作曲家の個性と時代背景を反映しており、ディヴェルティメントという形式の多様性を示しています。

まとめ

ディヴェルティメントは、18世紀の貴族社会が生み出した、優雅で楽しい音楽です。その自由な形式と多様な楽器編成は、作曲家の創造性を刺激し、数多くの名曲を生み出しました。現代においても、ディヴェルティメントは、その明るく軽妙な魅力で、聴衆を魅了し続けています。

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