デザイナーベイビー (小説)

デザイナーベイビー

『デザイナーベイビー』は岡井崇による医療小説で、2011年7月8日に早川書房から刊行されました。2013年にはハヤカワ文庫の上下巻が出され、2015年には新版も出版されました。本作は前作『ノーフォールト』から10年後の城南大学病院を舞台としており、生殖医療が取り上げられています。前作に登場したキャラクターたちも多く顔を見せ、物語に厚みを加えています。

あらすじ

本作は、ある新生児室からの誘拐事件から始まります。生後3日目の女児ノゾミは、将来ノーベル賞候補とされる近森博士の娘で、ダウン症を抱えています。彼女は病院から連れ去られ、一刻も早い救出が求められます。病院の院長は、犯人の要求に従って身代金5000万円を運搬しますが、犯人に騙されてしまいます。

誘拐事件の背後にある陰謀と急に発生した妊婦の死亡事件が絡まり、医療ミスの疑惑が浮上します。江嶋英恵という妊婦が脳梗塞を起こした後、肺塞栓症で急死するのですが、担当看護師が血栓予防の薬を投与しなかったことを告白します。しかし、この単純なミスがその女性の死に繋がるにはあまりにも不可解なため、医療ミスが故意であるのかどうか、疑いが高まります。物語が進行する中で、誘拐事件と妊婦の急死が互いに関連していることが明らかになります。

登場人物

本作には多くのキャラクターが登場し、それぞれが物語の重要な要素を担っています。城南大学病院の産婦人科教授の須佐見は、怒りっぽい性格ながらも、医療ミスの調査に真摯に取り組みます。柊奈智は、産科病棟の医長として的確な判断をしながら、複雑な人間関係にも苦しみます。

また、江嶋家の悲劇も物語に深みを与えています。英恵の夫である敏幸は、彼女の死に加担した疑惑の中で苦しみ、彼の過去と不妊治療の複雑さが絡むことで、物語にさらなる緊張感が生まれます。

さらに、近森夫妻は、自らの医療的な選択に苦しみながらも、愛と希望を求め続ける姿が描かれています。子どもを救うためにどんな代償を払う覚悟があるのかというテーマは、読者に強いメッセージを残します。

テレビドラマ

2015年には、この物語がNHK総合でテレビドラマ化され、主演は黒木メイサが務めました。ドラマは小説のエッセンスを大切にしつつ、新たなアプローチで物語を描き出すことで視聴者の心を掴みました。

結論

『デザイナーベイビー』は、医療にまつわる倫理や人間関係、そして愛の意味について深く考えさせられる作品です。人の命がどれほど貴重で、同時に脆弱であるかを示すこの作品は、読む者に衝撃的な経験を提供します。

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