デザインビルド方式

デザインビルド方式とは

デザインビルド方式（Design-build）とは、建設プロジェクトにおいて、設計と施工のサービスを単一の契約主体に一括して発注する方式のことです。従来の設計と施工を分離して発注する方式とは異なり、デザインビルド方式では、設計者と施工者が同じ組織または連携したチームとしてプロジェクトに取り組みます。

デザインビルド方式の分類

デザインビルド方式は、さらに細分化することができます。

建築家主導のデザインビルド (ALDB)：設計者がプロジェクト全体を主導する方式です。
請負業者主導のデザインビルド：施工業者がプロジェクトを主導する方式です。

デザインビルド方式の歴史

日本では、設計と施工を一括して発注する形態は、民間の建設事業では従来から行われてきました。しかし、官公庁が発注する公共事業では、1959年の建設事務次官通達により、設計と施工を分離する方式が確立されました。これは、設計の公平性と透明性を確保するためでした。一方で、日本建築家協会は、設計と施工の一括発注を兼業とみなし、禁止事項として解釈してきました。

しかし、近年、技術の進歩や建設事業の高度化、複雑化を背景に、工事の内容によっては、設計と施工を一体的に発注する方が効果的な場合もあるとして、デザインビルド方式が試行されるようになってきています。2001年には、設計・施工一括発注方式導入検討委員会報告書がまとめられ、デザインビルド方式の定義や適用範囲、課題などが示されました。

デザインビルド方式のメリット

デザインビルド方式には、以下のようなメリットがあります。

効率性の向上：設計と施工が一体となるため、コミュニケーションが円滑になり、設計変更や手戻りが少なくなります。これにより、工期の短縮やコスト削減が期待できます。
責任の所在の明確化：単一の契約主体が設計と施工の両方の責任を負うため、問題が発生した場合の責任の所在が明確になります。
柔軟な対応：設計段階から施工者の意見を取り入れることができるため、現場の状況に合わせた柔軟な設計が可能になります。
イノベーションの促進：設計者と施工者が協力して新しい技術や工法を導入することで、より高品質な建設物を実現できます。

デザインビルド方式のデメリットと課題

デザインビルド方式には、以下のようなデメリットや課題も存在します。

設計の独立性の低下：設計者が施工業者の一部となるため、設計の独立性が損なわれる可能性があります。
価格競争の低下：設計と施工を別々に発注する場合と比較して、価格競争が働きにくくなる可能性があります。
品質管理の難しさ：設計と施工が一体となるため、品質管理が難しくなる可能性があります。
透明性の確保：契約プロセスや費用内訳の透明性を確保する必要性があります。

日本におけるデザインビルド方式の現状

日本では、公共事業においてデザインビルド方式の導入が進められていますが、課題も多く残されています。

設計監理の重要性：設計と施工を一体的に発注する場合でも、設計監理の役割は非常に重要です。設計図書と現場の条件の食い違いを解消し、品質を確保するためには、設計監理の専門家が必要です。
人材育成の必要性：デザインビルド方式を成功させるためには、設計と施工の両方に精通した人材を育成する必要があります。特に、設計事務所では、机上の設計だけでなく、現場でのデザインを指揮できる人材の育成が求められます。

デザインビルド方式の今後

デザインビルド方式は、その効率性や責任の所在の明確化などのメリットから、今後ますます普及していくと予想されます。しかし、課題も多く残されているため、発注者、コントラクター、コンサルタントの三者関係を確立し、設計の独立性と責任の明確化、品質の確保、コストの縮減を担保していく必要があります。また、設計者と施工者が協力して、より高品質な建設物を実現していくための努力が必要です。

デザインビルドと他の方式との比較

デザインビルド方式は、従来の設計・入札・施工（Design-Bid-Build）方式とは対照的です。

設計・入札・施工方式：まず設計者が設計を行い、その設計図を基に施工業者が入札を行い、選定された施工業者が工事を行います。
デザインビルド方式：設計と施工が一体となった単一の組織がプロジェクト全体を担当します。

デザインビルド方式は、単一責任契約に依存しており、プロジェクト所有者のリスクを最小限に抑え、設計を重ねて納期を短縮するために活用されるプロジェクトのフェーズと建設フェーズです。

海外におけるデザインビルド方式

デザインビルド方式は、アメリカやイギリスなど海外でも広く活用されています。

アメリカ：アメリカでは、デザインビルド協会（DBIA）が設立されており、デザインビルド方式の普及と発展に貢献しています。
イギリス：イギリスでは、歴史的に建築家が設計と施工を兼ねることもありました。

デザインビルド方式は、プロジェクトの性質や規模、クライアントのニーズに応じて、様々な形態で活用されています。

まとめ

デザインビルド方式は、建設プロジェクトの効率化や品質向上に貢献する可能性を秘めた方式です。しかし、そのメリットを最大限に活かすためには、設計の独立性や透明性の確保、品質管理の徹底などの課題を克服する必要があります。今後、デザインビルド方式がますます普及していく中で、発注者、コントラクター、コンサルタントの三者が協力し、より良い建設プロジェクトを実現していくことが求められます。

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