デジモンクロニクル

『デジモンクロニクル』は、株式会社バンダイから発売された携帯ゲーム機『デジモンペンデュラムX』シリーズの根幹を成すバックグラウンドストーリーです。この物語は、バージョンごとに異なる章立てと副題を持ち、デジモン世界の存続をかけた壮大なドラマを描き出します。

物語の始まり：デジタルワールドの危機

デジモンたちが成長と進化を繰り返し、そのデータ容量が肥大化していく中で、彼らの暮らす「デジタルワールド」は自己の許容量を超え、崩壊の危機に直面していました。この未曽有の事態を回避するため、デジタルワールドを統括するホストコンピューター「イグドラシル」は、「プロジェクト・アーク（箱舟計画）」という名の過酷な計画を発動させます。この計画では、イグドラシルの守護者である「ロイヤルナイツ」と、研究対象として選ばれた一部のデジモンだけを新たなデジタルワールドへ移住させ、それ以外のデジモンは「Xプログラム」によって強制的に削除するという非情なものでした。かくして、選ばれしデジモンは新天地で新たな進化を始め、不要とされたデジモンは消え去るはずでした。

しかし、デジモンたちの生存本能は凄まじい力を発揮します。彼らはXプログラムを取り込み、自己のデジコア内に「X抗体」を生み出すことに成功しました。このX抗体を得たデジモンは、「ゼヴォリューション（X-進化）」という独自の進化を遂げることで、強制削除の脅威から生き延びたのです。

一方で、旧デジタルワールドはXプログラムの危険に晒され続け、X抗体を巡る争いが激化し、これまで以上に弱肉強食の世界と化しました。生き残ったX抗体を持つデジモンたち（Xデジモン）は、Xプログラムの脅威がない新たなデジタルワールドへと逃げ込みます。しかし、イグドラシルは彼らを異分子と見なし、ロイヤルナイツに対し、Xデジモンの殲滅を命じるのでした。こうして、デジタルワールドの命運をかけた戦いが幕を開けます。

物語を彩る章立て

『デジモンクロニクル』のストーリーは、『デジモンペンデュラムX』のバージョンに対応した章立てで進行します。

version1.0・version1.5: 『現在の章』と銘打たれ、Ver1.0は「X‐進化」、Ver1.5は「死のX‐進化」という副題がつけられています。
version2.0: 『過去の章』として展開し、副題は「X-CAST」です。
version3.0: 物語の締めくくりとなる『最終章』であり、副題は「バトル進化」とされています。

物語の流れは、Ver1.0からVer1.5へと続き、同時に進行するVer2.0のエピソードを経て、最終的に全てのストーリーがVer3.0へと収束していく構成となっています。また、この物語は、テレビスペシャルとして放送された『デジタルモンスターゼヴォリューション』のストーリーの基盤ともなっています。

主要な登場人物とデジモン

この壮大な物語には、個性豊かなキャラクターたちが登場します。

堂本コータ＆ドルモン: 新しいデジタルワールドのベルサンディターミナルを冒険するコンビです。ドルモンはドルガモン、ドルグレモン、ドルゴラモンへと進化を遂げ、デクスリューションを経てデクスドルゴラモンとなります。その後、ドルモンが分離し、ラプタードラモン、グレイドモン、そして究極のX進化体であるアルファモンへと進化していきます。
武者ユージ＆リュウダモン: ウルドターミナルを旅するパートナーです。リュウダモンはギンリュウモン、ヒシャリュウモンを経て、強力なオウリュウモンへと進化します。後にスクルドターミナルでアルファモンと融合し、そのデータは究極戦刃王竜剣やアルファモンの翼へと変化します。
オメガモン: イグドラシル直属の聖騎士集団「ロイヤルナイツ」の一員。絶対的な善ではなく、自身の正義を信念に行動します。イグドラシルの命令に従い、Xデジモンの排除に動きますが、ドルゴラモンとの戦いの中で窮地に陥った際に、イグドラシルの意図に反しつつX進化を遂げます。
デュークモン: オメガモンと同じくロイヤルナイツの一員ですが、X進化したデジモンに対し、まるで試すかのような独自の行動を取ります。彼のX進化の経緯は明確にされていません。
デクスドルゴラモン: オメガモンXとの戦いに敗れたドルゴラモンが、「死のX進化」によって変貌した姿です。
デクスモン: イグドラシルがデクスドルゴラモンを危険視し、ドルモンの生体データを除いた残りのデータを未来世界へ転送した後に現れた存在。正確にはデジモンではなく、プログラムの一種とされ、際限なく活動を繰り返します。

物語の鍵を握る用語

『デジモンクロニクル』の理解には、いくつかの重要なキーワードがあります。

イグドラシル: デジタルワールド全体を管理する中枢ホストコンピューター。その意思がデジタルワールド自身にあるのか、あるいは外部に存在するのかは不明とされています。
Xプログラム: 旧デジタルワールドの大多数のデジモンを強制的に削除するためにイグドラシルが放った、破壊を目的としたプログラムです。
X抗体: デジモンがXプログラムを取り込むことで自己のデジコア内部に生成する特殊な物質。これにより、デジコアに秘められた潜在能力を限界以上に引き出すことが可能となります。
ゼヴォリューション（X-進化）: X抗体を生み出した、または取り込んだデジモンが行う特殊な進化。この進化により、姿や能力が大きく変化します。これは、生命が持つ「存在し続けたい」という強い本能が形になった、生存のための進化と言えます。
デクスリューション（死のX-進化）: プロトタイプデジモンの一部に施された、「死亡しても他者のデジコアを利用して進化を繰り返し、生き続ける」という改造が、X抗体によってデジコアから引き出された結果発生する進化。これにより進化したデジモンは、肉体が朽ち、理性を失ってもなお、本能的に他者のデジコアを喰らい続け、死と再生を繰り返しながら存在し続けます。こちらも生命の「存在し続けたい」本能が生んだ、より過酷な進化形態です。
* NEWデジタルワールド: デジタルワールドの再構築によって生まれた新しい世界。構造的に「現在世界」のベルサンディターミナル、「過去世界」のウルドターミナル、「未来世界」のスクルドターミナルの三つに分かれており、層（レイヤー）を移動することで各世界を行き来することが可能です。

メディアミックス展開

『デジモンクロニクル』の世界観は、デジモンカードダスにも展開されました。特にブースター第20弾から第23弾、スターター9および10、そしてアルティメットバトルセット『X進化デック』などが、この物語に基づいた内容となっています。

この物語は、デジタルワールドの存続をかけた過酷な状況下で、デジモンたちの生きようとする強い意志や、進化という概念の新たな側面を描き出した作品と言えるでしょう。

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