デュマ法

デュマ法による窒素定量：迅速で自動化されたタンパク質分析

デュマ法は、1826年にジャン＝バティスト・デュマによって開発された、物質中の窒素含有量を定量的に測定する分析化学的手法です。本法は、食品試料中の粗タンパク質濃度の迅速測定に特に有効であり、近年では自動化された機器による分析が主流となっています。

デュマ法の原理と手順

デュマ法では、まず正確に秤量した試料を、高温（800～900℃）の燃焼炉内で酸素雰囲気下で燃焼させます。この過程で、試料中の有機物は分解され、二酸化炭素、水、窒素などのガスが発生します。発生したガスは、その後、二酸化炭素と水を吸収する特殊なカラム（例えば、水酸化カリウム水溶液）を通過します。このカラムによって、二酸化炭素と水は除去され、窒素のみが残ります。

最後に、熱伝導率検出器を用いたカラムによって、残留窒素を分離・検出します。検出器は窒素の量を測定し、その値に基づいて試料中の窒素濃度を算出します。機器の較正には、既知の窒素濃度を持つ標準物質を用います。測定された窒素濃度から、試料中の粗タンパク質量への換算には、タンパク質の種類によって異なる換算係数を用いる必要があります。これは、様々なタンパク質のアミノ酸組成が異なるためです。

デュマ法とケルダール法の比較

デュマ法は、従来のケルダール法に比べて、いくつかの利点を有しています。まず、完全に自動化されており、分析にかかる時間が大幅に短縮されます。ケルダール法では1時間以上かかる分析が、デュマ法では数分で行える場合があります。また、デュマ法は有毒な化学物質や触媒を使用しないため、環境負荷や作業者の安全性の面でも優れています。

しかしながら、デュマ法にも限界があります。初期投資費用が高額であることが挙げられますが、近年は機器の開発が進み、この点は改善されてきています。また、ケルダール法と同様に、非タンパク態窒素も測定値に含まれるため、真のタンパク質量を正確に求めるには、補正が必要になります。さらに、タンパク質の種類によって異なる換算係数を用いる必要があり、この点も注意が必要です。

デュマ法の応用と今後の展望

デュマ法は、食品中のタンパク質含有量の迅速測定に広く用いられており、食品の栄養表示に重要な役割を果たしています。特に、脂肪含有量の高い食品では、ケルダール法による分析で火災のリスクが高まるため、デュマ法が有効な代替手段となります。

今後、デュマ法のさらなる高精度化、高速化、簡便化が期待されます。また、様々な種類の食品試料への適用範囲の拡大や、分析コストの低減も重要な課題です。デュマ法は、食品分析だけでなく、様々な分野での窒素定量分析に貢献する技術として、今後も発展を続けるでしょう。

関連手法

燃焼分析：炭素、水素、窒素などの元素を同時に定量できる分析手法。デュマ法と類似したアプローチに基づいています。
ケルダール法：従来から用いられてきた窒素定量法。デュマ法と比較して分析時間が長く、有毒な試薬を使用することがあります。
* Bicinchoninic acid assay (BCA法)：タンパク質を比色定量する手法。タンパク質中の窒素量を間接的に測定します。

もう一度検索