デルス・ウザーラ (1975年の映画)

映画『デルス・ウザーラ』

『デルス・ウザーラ』（ロシア語: Дерсу Узала、英語: Dersu Uzala）は、1975年に公開されたソ連の映画です。この映画は、世界的に有名な監督黒澤明によって手掛けられ、主演にはユーリー・ソローミンが起用されています。また、映画は70ミリワイドで制作されており、上映時間は141分です。この作品は、1923年にロシア人探検家ウラジーミル・アルセーニエフが著した同名の探検記録を原作としています。

ストーリーの概要

映画の物語は、アルセーニエフがロシアのシホテ・アリン地方を探検するところから始まります。彼は政府から地図を製作する任務を託され、探検隊の隊長を務めることになります。その過程で、先住民のゴリド族（現在のナナイ族）の猟師、デルス・ウザーラが彼らのガイドとして同行します。シベリアの広大な自然を背景に、アルセーニエフとデルスの心温まる交流が描かれ、友情や文化の違いがテーマとして浮かび上がります。

製作背景と経緯

本作の原作である探検記録『デルス・ウザーラ』は、アルセーニエフが先住民のデルスと共に沿海地方を探検する実話に基づいています。黒澤明は、助監督時代にこの作品を読み、その魅力に感銘を受けて映画化を夢見ていました。第2次世界大戦前に構想され、数十年を経て実現へと至りました。

1971年、黒澤はモスクワ国際映画祭に参加し、ソ連の映画製作に関して意見交換を行った際に、『デルス・ウザーラ』の映画化が決定しました。1973年にはモスフィルムとの製作協定が結ばれ、黒澤の創造的な意見が最大限尊重される内容となりました。シナリオは、黒澤とユーリー・ナギービンによって共同執筆され、途中での意見の相違もありましたが、最終的には黒澤のビジョンが具現化されました。

スタッフとキャスト

本作品の制作はモスフィルムが行ったため、一般的にはソ連側のスタッフが多く参加しました。しかし、黒澤の演出意図をより正確に伝えるために、数名の日本側スタッフも参加しており、松江陽一や撮影の中井朝一らがその役割を果たしました。

デルス役には、実生活でも狩りや釣りが趣味の舞台俳優マクシム・ムンズクが起用され、一方でアルセーニエフ役には有名なユーリー・ソローミンが選ばれました。

撮影環境

撮影は1974年から始まり、厳しいシベリアの自然環境で行われました。モスフィルムに所属する軍隊が護衛につきましたが、旧式の撮影機器や異なる制作体制による技術的な挑戦がありました。それでも、黒澤のこだわりによって多くの困難を克服し、1975年に撮影が完了します。

映画の評価と影響

『デルス・ウザーラ』は、公開以来多くの国際映画賞を受賞。第48回アカデミー賞では外国語映画賞を獲得しました。また、モスクワ国際映画祭で金賞を受賞し、イタリアのダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞やフランス映画批評家協会賞など、様々な国の賞を受けたことで、その評価は世界的に広まりました。

この映画は、映画批評サイトRotten Tomatoesでも高い支持を得ており、批評家から73%、観客から94%の支持率を記録しています。

その他の情報

元々の映像形式は70mmであったが、上映にあたり35mmのフィルムが用いられ、日本では多く上映されることがありませんでした。しかし、2017年には希少な70mmプリントが上映イベントで復活を果たしました。また、脚本には当時の国際情勢を反映した変更点もあり、中国を刺激しないように書き換えられた部分もあるなど、歴史的な背景を持った作品です。

『デルス・ウザーラ』は、黒澤明が描く自然と人間の深い結びつきを持つ映画であり、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

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