デンプチン文化

デンプチン文化：古代ポメラニアの文化交流と変遷

デンプチン文化は、西暦3世紀後半から6世紀初頭にかけて、現在のポーランド北部のポメラニア地方で栄えた考古学文化です。この文化は、先行するヴィエルバルク文化を基盤としながら、エルベ川流域の文化や、その後、南方・東方からの西スラヴ系文化の影響を受け、独自の展開を遂げました。

ヴィエルバルク文化からの発展と周辺文化の影響

デンプチン文化の起源は、ヴィエルバルク文化の一部、特にパルセンタ川とドラヴァ川の間の地域に求めることができます。この時代、東隣の地域は砂地で農業に不向きだったため、人口はまばらでした。デンプチン文化がヴィエルバルク文化を継承したのか、それとも置き換えたのかは明確ではありませんが、西隣の地域との継続的な交流が、この文化の形成に重要な役割を果たしたと考えられています。

デンプチン文化は、ヴィエルバルク文化の伝統を受け継ぎつつ、グストフ文化やエルベ川流域の文化からの影響も強く受けています。埋葬方法は土葬であり、6世紀初頭まで続けられました。その後、土葬の習慣は廃れました。

レモウィ族との関連性

歴史家のタキトゥスは、この地域にレモウィ族という部族が存在したと記録しています。デンプチン文化の担い手は、このレモウィ族、あるいはグロンマ人と同一視される可能性のある人々だったと考えられています。レモウィ族は、バルト海沿岸に住むリューゲン族と隣接しており、ゲルマンの伝承には、レモウィ族のヘーテル王とリューゲン族のハーゲン王との間の戦闘が記されています。しかし、レモウィ族の領土や、グロンマ人との同一性については、依然として議論の余地があります。

スラヴ系文化への移行

6世紀初頭になると、ポメラニア地方では、スラヴ系文化が台頭し始めます。この地域には、リューゲン族やレモウィ族といったゲルマン系住民が居住していましたが、わずかな数のスラヴ系支配者による征服と文化的な同化が進んだと推測されます。この結果、ゲルマン系住民は、ポメラニア地方の西スラヴ語を話す部族へと変容していきました。彼らは、その後、数世紀にわたる異教時代を経て、12世紀にポーランド王国と神聖ローマ帝国によってキリスト教化され、ポメラニア公国が成立します。

まとめ

デンプチン文化は、古代ポメラニアにおける複雑な文化交流と変遷を示す重要な考古学文化です。ヴィエルバルク文化をルーツとしながら、周辺地域との交流を通じて独自の文化を形成し、最終的にはスラヴ系文化へと移行していきました。レモウィ族との関連性など、未解明な部分も多く残されていますが、今後の研究によって、古代ポメラニアの歴史がさらに明らかになることが期待されます。

参考文献

Karl-Heinz Otto, Humboldt-Universität zu Berlin Institut für Ur- und Frühgeschichte, Ost Universität (Berlin, Humboldt-Universität zu Berlin Institut für Völkerkunde und deutsche Volkskunde, Ethnographisch-archäologische Zeitschrift (EAZ), v.43:no.1-4, Verlag der Wissenschaften, 2002, p.390
Johannes Hoops, Hans-Peter Naumann, Franziska Lanter, Oliver Szokody, Heinrich Beck, Rudolf Simek, Sebastian Brather, Detlev Ellmers, Kurt Schier, Ulrike Sprenger, Else Ebel, Klaus Düwel, Wilhelm Heizmann, Heiko Uecker, Jürgen Udolph, Reallexikon der germanischen Altertumskunde, Walter de Gruyter, p.281, ISBN 3-11-009635-8
Johannes Hoops, Hans-Peter Naumann, Franziska Lanter, Oliver Szokody, Heinrich Beck, Rudolf Simek, Sebastian Brather, Detlev Ellmers, Kurt Schier, Ulrike Sprenger, Else Ebel, Klaus Düwel, Wilhelm Heizmann, Heiko Uecker, Jürgen Udolph, Reallexikon der germanischen Altertumskunde, Walter de Gruyter, pp.266ff, ISBN 3-11-009635-8
Johannes Hoops, Herbert Jankuhn, Heinrich Beck, Rosemarie Muller, Dieter Geuenich, Heiko Steuer, Reallexikon der germanischen Altertumskunde, 2nd edition, Walter de Gruyter, 2001, pp.158,159, ISBN 3-11-016950-9

もう一度検索