デンマーク王国共同体

デンマーク王国共同体とは

デンマーク王国共同体（Rigsfællesskabet）は、デンマーク本土と、フェロー諸島およびグリーンランドという二つの自治領との関係を指す、半公式のデンマーク語の用語です。これらの地域は、デンマーク王国を構成する集合体として捉えられます。

英語では「Commonwealth of the Realm」または「United Kingdom of Denmark（デンマーク連合王国）」と訳されることもあります。しかし、これは連邦制や英連邦における国家間の連合とは異なり、非対称的連邦制（federacy）と呼ばれる単一国家です。

法的地位と自治権

フェロー諸島とグリーンランドは、それぞれ1948年と1979年以降、広範囲にわたる自治権を認められています。特にグリーンランドは、2009年のグリーンランド自治法によって、自治政府の権限がさらに拡大されました。フェロー諸島もまた、フェロー諸島の自治法に基づき、徐々に権限を拡大しています。

1953年に改正されたデンマーク王国憲法は、単一国家の憲法として、デンマークの3地域全てに適用されます。しかし、内政自治に関する合意は憲法には明記されていません。フェロー諸島とグリーンランドは、内政問題のほとんどを自ら管理しており、特定の分野では、デンマーク王国の代わりに国際合意を結ぶ権限も有しています。

この関係が特徴的なのは、デンマークが欧州連合（EU）の加盟国である一方で、グリーンランドとフェロー諸島はEUに加盟していない点です。これは、自治権に基づき、それぞれの地域が独自の判断でEUへの参加を見送った結果です。

国際社会における役割

外交面では、以前はデンマークが3地域全体を代表していましたが、近年はフェロー諸島とグリーンランドの役割が増大しています。特に地政学的な話題や商業漁業など、各地域の国益に関わる分野では、外交政策において共有の影響力を発揮しています。

しかし、国際社会においては、これらの地域は依然としてデンマークの統治下にあり、国際的な会議ではデンマーク代表団の一員として参加しています。例えば、国際連合（UN）、北大西洋条約機構（NATO）、経済協力開発機構（OECD）、世界貿易機関（WTO）といった主要な国際機関には、デンマークが王国共同体を代表して参加しており、フェロー諸島とグリーンランドは正式な加盟国ではありません。

フェロー諸島とグリーンランドは、北欧理事会には加盟しています。北欧理事会は、EUとの連携を強化していますが、両地域ともEUには加盟していません。グリーンランドは、1973年にデンマークに従って欧州諸共同体（EC）に加盟しましたが、1979年の自治法制定後の1985年に脱退しました。これは、EUとその前身組織を脱退した唯一の例です。

デンマークは近年、国際問題におけるフェロー諸島およびグリーンランド政府の関与を積極的に進めており、例えば、グリーンランド西北部にあるチューレ空軍基地に関するデンマークとアメリカ合衆国との間の新条約締結にも、グリーンランドが関与しています。

デンマーク王国共同体の特異性

デンマーク王国共同体は、単一国家でありながらも、自治権を持つ二つの地域が広範囲な内政を管理する、特殊な形態を持っています。この関係は、連邦制とも連合とも異なる、独自の特徴を持つ国家連合体であると言えるでしょう。フェロー諸島とグリーンランドの代表は、デンマーク議会であるフォルケティングにそれぞれ2議席を有しており、デンマーク国内の政治にも一定の影響力を持っています。

まとめ

デンマーク王国共同体は、デンマーク本土、フェロー諸島、グリーンランドという三つの地域が、複雑に絡み合いながらも、それぞれの自律性を尊重し共存する、独特な国家のあり方を示しています。この関係は、国際社会において、小国がどのように大国と関係を築き、独自の存在感を維持していくかを考える上で、重要な示唆を与えてくれるでしょう。

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