デヴィッド・トゥープ

デヴィッド・トゥープ（David Toop）は、1949年生まれのイギリスを拠点に活動するミュージシャン、作家、キュレーター、そして教育者です。彼は、ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションでオーディオ文化と即興の教授を2013年から2021年まで務めました。また、イギリスの音楽雑誌『The Wire』誌に定期的に寄稿しています。

生い立ちと学歴

トゥープは幼少期をハートフォードシャー州ウォルサムクロスで過ごし、ブロックスボーン・グラマー・スクールを経て、ホーンジー芸術大学とワトフォード芸術大学で学びました。

音楽家、著述家、キュレーターとしての活動

1970年代初頭から、イギリスの実験音楽、即興音楽シーンで重要な役割を果たしてきました。ポール・バーウェル、ボブ・コビング、ヒュー・デイヴィース、マックス・イーストリー、ブライアン・イーノといった数多くの音楽家とコラボレーションを行っています。近年では、中島吏英、サーストン・ムーア、坂本龍一、シゼル・アンドレセン、カミール・ノーメント、鈴木昭男、エレイン・ミッチェナーなど、幅広いアーティストと共演しています。

1974年には、マックス・イーストリー、ヒュー・デイヴィース、エヴァン・パーカー、ポール・リットン、ポール・バーウェルらとの共作を含む書籍『New/Rediscovered Musical Instruments』を編集・出版しました。また、ロンドン・ミュージシャンズ・コレクティブ、『ミュージックス』誌、『コリュージョン』誌の創設メンバーでもあります。

1977年には、自身のレコード・レーベルであるクオーツ・パブリケーションズを設立。同年から1986年まで活動し、2015年に再結成した即興グループ「Alterations」のメンバーも務めています。

著述家としては、1984年にヒップホップに関する書籍『Rap Attack』を出版。1995年には、『音の海』を出版し、現代音楽における詩的な探求を行いました。2000年には『Exotica』で米国図書賞を受賞しています。他にも、『Sinister Resonance』や、ペンデルン音楽書賞の最終候補となった『Into the Maelstrom』など、数多くの著作を発表しています。

キュレーターとしても、2000年にサウンド・アート展「Sonic Boom」を企画し、2001年にはコンピレーションCD『Not Necessarily English Music』をキュレーションしました。

実験的なアプローチ

トゥープは、美術館における「音の出るもの」を積極的に扱い、より実験的なアプローチを追求しています。2012年には、彼のオペラ『Star-shaped Biscuit』がオールドバラで上演されました。

主要著作

Rap Attack: African Jive to New York Hip Hop (1984)
音の海 - エーテルトーク、アンビエント・サウンド、イマジナリー・ワールド (1995)
Exotica: Fabricated Soundscapes in a Real World (1999)
Haunted Weather: Music, Silence, and Memory (2004)
Sinister Resonance: The Mediumship of the Listener (2010)
Into the Maelstrom: Music, Improvisation and the Dream of Freedom, Before 1970 (2016)
フラッター・エコー 音の中に生きる (2017)
Inflamed Invisible: Collected Writings on Art and Sound 1976-2018 (2019)

ディスコグラフィー（一部）

New and Rediscovered Musical Instruments (1975) ※with マックス・イーストリー
Breathing Spirit Forms (2021) ※with 鈴木昭男、ローレンス・イングリッシュ
* Garden Of Shadows And Light (2021) ※with 坂本龍一

デヴィッド・トゥープは、音楽、文学、芸術の境界を越え、常に新しい表現を追求し続ける、現代における重要な思想家、音楽家の一人と言えるでしょう。

もう一度検索