デ・トマソ・パンテーラ

パンテーラ (Pantera)

パンテーラは、1971年にイタリアの自動車メーカー・デ・トマソが発表したスーパーカーです。このモデルは、イタリアの華麗なデザインとアメリカの大排気量エンジンを融合させたユニークな存在で、スーパーカー市場に新しい風をもたらしました。「パンテーラ」という名称は、イタリア語で「ヒョウ」を意味します。

経緯

1970年代初頭、デ・トマソの創設者アレッサンドロ・デ・トマソは、アメリカのフォード・モーターの副社長で関係が深かったリー・アイアコッカとの交流を通じて、「GT40のイメージを引き継いだスポーツカー」を開発するプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトはフォードのブランドイメージを向上させることを目的とし、デ・トマソがその手腕を発揮することで、パンテーラが誕生しました。

その最大の目標は、コストを抑えて大量生産可能なスポーツカーを作ることでした。それに応じて、パンテーラは前モデルのマングスタ同様、フォード製エンジンを採用することが決定されました。デザインは、トム・ジャーダが担当し、パンテーラの全体的な美しさとスポーティさを具現化しています。主に狙われた市場がアメリカであったため、フォードの広範な販売網を活用して販売が行われました。

機構・スタイル

パンテーラは、バックボーンフレームを採用していた前作までのデザインから脱却し、生産性に優れたモノコック構造を取り入れています。サスペンションにはダブルウィッシュボーンが使用されましたが、リアサスペンションには若干の問題点があり、剛性が不足していたため、後に改良される必要がありました。

搭載されたエンジンはフォードの351V8で、通称「クリーブランド」として知られています。排気量は5.8リットルで、出力は330馬力、トルクは45kgf・mを誇ります。パワーは高いものの、ほとんどチューニングが施されないコスト重視の設定となっています。エンジンは高性能ながら一般的な潤滑方式を採用していたために、重心の高さが影響し、走行時に不安定な印象を与えることがありました。

このようなデザイン哲学や機能性の違いから、パンテーラはしばしばライバルであるフェラーリやランボルギーニと比較され、「純粋なスポーツカーではない」といった意見も存在していましたが、価格帯は競合モデルの半分程度に設定されていたため、非常に競争力がありました。1970年代の最盛期には、2700台以上の販売を記録しました。1973年のオイルショックによって販売は落ち込むものの、その後も少数生産が続けられました。

モデルバリエーション

パンテーラは、様々なモデルが展開されました。基本的なパンテーラは1971〜1972年モデルで、トランスミッションや車体の各部に変更が加えられた後期型も存在します。また、1972年に追加されたパンテーラLモデルは、アメリカ市場向けにエンジン出力を抑えた豪華な仕様でした。

1973年にはハイパフォーマンスモデルであるパンテーラGTSが登場し、出力が350馬力に引き上げられました。続くパンテーラGT4とGT5では、レーシングカーとしての改良が施されており、GT5S、SIモデルも存在します。特にSIモデルでは、全体的なスタイリングが一新され、よりスムーズなラインが特徴的です。

光永パンテーラ

日本においては、「光永パンテーラ」と呼ばれる特別な改造車も存在し、1981年に最高速度記録を樹立しました。このモデルは非常に高いチューニングを施され、ドライバーは高橋国光氏でしたが、残念ながら所持者の事故によってその記録は後に続くことがありませんでした。

復刻モデル

2019年には、モデナのカスタムカーメーカーがパンテーラをモチーフにしたモデルを発表しました。これにより、パンテーラの魅力が再びクローズアップされ、現代においてもそのデザインは色あせることなく、多くの自動車愛好者に愛されています。

パンテーラは、イタリアとアメリカの自動車製造技術の融合を象徴するスーパーカーとして、その地位を確立しました。その魅力は今なお、多くの人々を惹きつけています。

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