トゥー・ヴァージンズ

アルバム「未完成」作品第一番 トゥー・ヴァージンズ

ジョン・レノンとヨーコ・オノが1968年に発表したアルバム『未完成』作品第一番 トゥー・ヴァージンズ（原題：Unfinished Music No.1: Two Virgins）は、ふたりにとって最初の共同制作となる作品です。このアルバムは、当時の前衛音楽の影響を受けた実験的な内容と、彼らの私的な関係が反映されている点で特筆に値します。

制作の背景

レノンは1960年代の中頃から前衛音楽に強い興味を持ち、独自のアルバム制作を構想していました。1966年11月にはロンドンのインディカ・ギャラリーで、アメリカ出身の前衛芸術家であるオノと出会い、その後は彼女の個展支援やビートルズのレコーディングセッションに招くなど、その関係を深めていきました。1968年の初めにはインドでの修行を通じて、ふたりは文通を通じて心の距離を縮めていました。

そして、1968年5月19日の夜、レノンは妻シンシアの不在を利用してオノを自宅に招待し、彼女と共に前衛音楽の創作に取り組むことになります。このセッションは、ふたりの音楽的な結びつきだけでなく、強い愛情をも示すものでした。

音楽的内容

『トゥー・ヴァージンズ』には、ふたりが即興で作り出した12曲が収められています。特に「Together」では、1928年の同名ヒット曲がバックに流れており、アルバム全体を通じてレノンとオノの独自なアプローチが感じられます。作品の表現は純粋な前衛音楽にとどまらず、非常にパーソナルなものであり、二人の関係性を音楽を通じて探求しているのです。

ジャケットと反響

このアルバムが特に注目された理由は、ジャケット写真にあります。二人が全裸で写っている、その挑発的な姿は世界中で物議を醸しました。表ジャケットには正面写真が、裏ジャケットには振り向く姿が収められ、視覚的にも印象深い作品となっています。ジャケットの写真は彼ら自身が撮影したものであり、彼らの特異な関係を象徴しています。

この大胆なアートワークにより、イギリスやアメリカを含む多くの国では、猥褻図書の販売疑惑が持たれ、アルバムの配給元であるEMIやキャピタル・レコードは本作の取り扱いを拒否しました。代わりに、イギリスのトラック・レコードやアメリカのテトラグラマトン・レコードが配給することになりました。テトラグラマトンでは、カバーの茶色の包装に変え、問題の多いジャケット画像を隠しました。

その後、このアルバムは日本でも販売されることが難しく、いかなるレコード会社も猥褻図書の販売による摘発を恐れ、リリースを避けました。レノンはこのアルバムのプロモーションで、オノとの肉体的な関係を持ったことを公言し、2人が非常に親密であることを示しました。彼らはアルバム制作後、自宅で同棲を開始し、常に一緒に行動するようになりました。

アルバムの再発

アルバム『未完成』作品第一番は1997年に初めてCD化され、その後も多くのファンに親しまれています。英・米のステレオ盤LPでは12曲に分かれていたセクションが、ボーナストラックを含む形で「サイド・ワン」と「サイド・トゥー」という2つのトラックに統合されてリリースされました。また、オノの自作曲「Remember Love」もボーナストラックとして追加されています。

アルバム『未完成』作品第一番は、ジョン・レノンとヨーコ・オノの愛と前衛音楽が交差する作品として、今なお色あせることなく多くの人々に影響を与えています。

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