トトメス1世

トトメス1世（Thutmose I）

トトメス1世は紀元前1524年から紀元前1518年、または紀元前1506年から紀元前1493年の間、古代エジプト第18王朝の第3代ファラオとして統治しました。彼の名前「トトメス」は「月神トートにより生み出されたもの」を意味し、即位名の「アアケペルカラー」は「偉大なる光、ラーの魂」という意訳になります。トトメス1世は、強力な軍事的リーダーシップによりエジプトをオリエントで有力な国に変貌させた王として広く知られています。

生い立ち

トトメス1世の出生に関しては多くの謎があります。彼は、前王アメンホテプ1世との血縁関係が確認されておらず、その父親についての情報も明確ではありません。アメンホテプ1世は30代半ばで崩御したことが推定されているのに対し、トトメス1世は50代半ばで亡くなったとされ、親子関係にあった可能性を否定する見方もあります。

また、トトメス1世の母であるセンセネブには王家の称号が付与されていなかったため、彼が王族の出身である可能性も低いと考えられています。彼はアメンホテプ1世の娘イアフメスと結婚し、後継者に定まったという説が広まっていましたが、イアフメスにも王族の称号は与えられていなかったことから、この説の確実性も疑問視されています。実際、トトメス1世はアメンホテプ1世の崩御以前から後継者として定められていたことを示す碑文も発見されています。

治世の功績

トトメス1世は優れた軍人であり、シリアやヌビアへの遠征を完成させることで国の地位を強固にしました。彼はアメンホテプ1世からの信任を受け、共同統治者としても活躍し、エジプトの領土を拡大しました。この過程で、古代エジプトの最初の栄光の時代を築く礎を築いたのです。

また、彼の治世においては、アメン神官団との良好な関係を維持し、アメン大神殿の建設を続行するなど、宗教的な支援も受けていました。この影響により、アメン神官団の権力は飛躍的に拡大しました。

埋葬とミイラの疑問

トトメス1世のミイラは、デイル・エル・バハリにあるKV35号墓から発見されましたが、これに関してはいくつかの疑問が寄せられています。発見されたミイラは、通常の王族のポーズ（胸の前で腕を組む）の形をとらず、両手は切り落とされた状態で股間に置かれていました。また、死亡推定年齢は50歳前後だが、骨格が未発達な部分が多いことから、トトメス1世のものと断定するのは難しいとの意見も存在します。加えて、再葬の際の取り違えが懸念され、第21王朝の人物と外見が似ていることから、その可能性も指摘されています。

このように、トトメス1世の生涯と治世には多くの興味深い要素があり、古代エジプトの歴史において重要な地位を占めていました。彼の存在は、エジプトの国家としての力を示す象徴であり、神官団との関係の発展にも寄与しました。

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