トバエ

『トバエ』: 明治時代の風刺雑誌

概要

『トバエ』（フランス語タイトル: "TÔBAÉ - journal satirique"）は、明治時代の横浜居留地でフランス人画家のジョルジュ・ビゴーによって発行された風刺雑誌です。1887年2月15日に創刊され、1889年12月15日に風刺雑誌としての活動を終えました。この雑誌は全70号が発行され、定期的に2回発行されていました。特筆すべきは、初版が1884年に発行されたにもかかわらず、わずか1号で廃刊となったことです。

創刊の背景

第2次『トバエ』の発行に至った背景には、ビゴー自身が岡山の陸軍士官学校での職を失い、横浜の居留地において外国人向けに絵を販売して生活を立て直そうとした経緯がありました。そして1886年、海外メディアからの依頼を受け報道画家としての仕事が得られたことで、経済的に安定し再び雑誌の発行が可能になりました。

風刺漫画としての特徴

『トバエ』は、在留外国人を主な読者層としており、全ページが風刺漫画で構成されていました。各ページにはフランス語と日本語による説明が手書きで付されており、特に日本語に関しては日本の協力者がいたと考えられています。内容は、明治時代の風俗や政治状況をテーマにした風刺が多く見受けられました。特に「現代日本」と題するセクションでは、当時の欧化の様子や日本社会の変化が描写され、「時事」では条約改正や保安条例に関連するといった、政治批判的な内容が展開されていました。

政治風刺の内容

ビゴーは、外国人が条約改正には尚早だとする意見を持っていたため、その立場を反映した風刺を展開しました。日本政府が国民の反対を押し切って条約改正に動くことに対して、強硬な批判の姿勢を示しました。特に、政府の近代化政策とそれに関連する適切な時期についての疑問を提起し、日本のさらなる発展には時間が必要であるという認識が強調されています。

発行の終息とその後

『トバエ』の売れ行きは一時的に好調でしたが、1890年にはその人気が落ち込み、1889年に大日本帝国憲法が発布されて自由民権運動が収束していく中で、政治における風刺は減少し、居留地の生活を中心とした内容に変わっていきました。その後、ビゴーの風刺の精神は『日本人の生活』『ポタン・ド・ヨコ』『ル・ポタン』といった短期間の雑誌に引き継がれ、彼の独特の視点は形を変えながら続けられました。

このように『トバエ』は、明治時代の日本における風俗や社会的背景を知る上で非常に重要な資料であり、ビゴーのユーモアと鋭い視線が詰まった作品として今でも多くの人々に親しまれています。

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