トマス (第2代ランカスター伯)

第2代ランカスター伯 トマス

第2代ランカスター伯爵トマス（1278年頃 - 1322年）は、イングランドの貴族であり、ヘンリー3世の孫にあたります。彼は、エドワード2世の寵臣政治に反抗し、一時的に権力を掌握しましたが、最終的には国王軍に敗れて処刑されました。彼の生涯は、当時のイングランドにおける貴族の権力闘争と政治的混乱を象徴しています。

生い立ちと家督相続

トマスは、初代ランカスター伯エドマンドの長男として生まれました。1294年にはリンカン伯爵の娘アリス・ド・レイシーと結婚し、1296年に父から莫大な所領を相続して、イングランド有数の貴族となりました。1298年には、正式に第2代ランカスター伯爵位と第2代レスター伯爵位を継承しています。

反国王派のリーダーとして

1307年にエドワード2世が即位すると、国王は寵臣ピアーズ・ギャヴィストンを重用し、諸侯との対立を深めました。トマスも反国王派に加わり、1310年には改革勅令起草委員会のメンバーとして、国王に政治改革とギャヴィストン追放を要求しました。1311年に岳父であるリンカン伯が亡くなると、トマスは反国王派のリーダーとなり、リンカン伯の称号と所領を継承して、イングランド最大の貴族となりました。

ギャヴィストンがイングランドに帰国すると、諸侯は激怒し、ギャヴィストンを私刑に処しました。この事件により、国王と諸侯の関係は悪化し、内乱の危機さえ生じました。その後、王と諸侯の和解が進められましたが、トマスは反国王の立場を崩さず、孤立を深めていきました。

国政掌握と失脚

1314年のバノックバーンの戦いでエドワード2世がスコットランド軍に大敗すると、国王の権威は失墜し、トマスが政府の指導権を握ることになりました。彼は改革勅令の遵守を基本政策としましたが、積極的な国政主導は行わず、国王や他の諸侯との疎隔を招きました。1316年には評議会首席の地位を与えられましたが、次第にペンブルック伯ら「中間派」に実権を奪われ、国王も権力を回復し始めました。その後、ディスペンサー父子が台頭すると、トマスは彼らとの対決に重点を移すようになりました。

1321年、トマスは国王にディスペンサー父子の追放を認めさせましたが、国王は翌年には彼らを呼び戻しました。これに激怒したトマスは、国王・ディスペンサー父子との対決を決意し、反乱を起こしましたが、1322年のバラブリッジの戦いで国王軍に敗北し、捕らえられて処刑されました。

人物と評価

トマスは、エドワード2世の寵臣たちよりも自身が軽んじられていることに不満を抱いていました。しかし、彼が起草に携わった改革勅令には民衆の支持を受けた条項もあり、彼の死後、民衆からは殉教者として神格化されました。

トマスの生涯は、中世イングランドにおける貴族の権力闘争と、政治的混乱を色濃く反映しています。彼は、国王の専制政治に抵抗し、民衆の権利を擁護しようとしましたが、最終的には権力闘争に敗れ、悲劇的な最期を遂げました。

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