トマホーク (ミサイル)

トマホーク (BGM-109 Tomahawk)

トマホークは、アメリカ合衆国で開発された巡航ミサイルで、特に海軍での運用を重視した設計がなされています。このミサイルは核弾頭や通常弾頭を搭載し、敵の地上目標や海上艦艇に対する精密打撃能力を持つことで、冷戦時代を通じてその存在感を発揮しました。

起源と開発の過程

トマホークの開発には、1972年の第一次戦略兵器制限条約（SALT Ⅰ）前後のアメリカ海軍の研究が深く関与しています。国家安全保障問題担当大統領補佐官のヘンリー・キッシンジャーは、核兵器に関する制約が強まる中で、効果的かつ条約に抵触しない兵器の開発を求めました。この背景から、無人飛行の有翼ミサイル、すなわち巡航ミサイルの研究が進められました。

開発初期には、大型のポラリス・ミサイルを利用する案と、小型の潜水艦用ミサイルの2つが提案されました。最終的に小型の潜水艦発射巡航ミサイル（SLCM）が選ばれ、水上艦や潜水艦両方からの発射が可能となることで、名称が海洋発射巡航ミサイル（SLCM）に変更されました。

1977年には統合巡航ミサイル計画（JCMP）が開始され、アメリカ海軍と空軍が共同で開発を進めることが決まりました。この際、海軍のBGM-109と空軍のAGM-86が技術を共有することにより、より高性能なミサイルの開発が目指されました。1980年には量産型BGM-109Aが開発され、実際の運用に向けた評価が始まりました。1983年には、正式に実任務に就役可能であると認定されました。

ミッションとバリエーション

トマホークのミッションは対地攻撃と対水上艦攻撃の2つに大別されます。主に発射方法、誘導システム、搭載弾頭の種類に応じて多くのバリエーションが存在します。中でも代表的なものに、対地攻撃用のTLAM-Nと通常弾頭を搭載したTLAM-Cがあります。

TLAM-Nは核弾頭を搭載し、最大2500kmの射程を持ちます。対してTLAM-Cは通常弾頭を搭載し、大型の目標を破壊することを目的としています。

また、対水上艦用のTASMも開発されましたが、シリーズ内での退役に至ります。しかし、ブロックⅣ以降の新型ミサイルでは、再び対艦能力を復活させる方向で進められています。

作戦歴

トマホークは、その運用歴の中で多くの実戦経験を積んできました。1991年の湾岸戦争では、初めての実戦において、合計288発が発射され、精密攻撃の能力を証明しました。以降もトマホークは、様々な抗争や紛争において多くの役割を果たし、その存在は世界的な軍事戦略において重要な位置を占めるようになりました。

現在の運用と今後の展望

現在、アメリカだけでなくイギリス、オーストラリア、日本など多国で導入が進められています。特に日本では、敵基地攻撃能力を有するミサイルとしてトマホークの導入が検討されており、今後の防衛戦略に大きな影響を与えることが期待されています。

2023年には、日本によるトマホークの調達が決定され、今後の採用が進められる見込みです。トマホークシリーズは、戦術的な必要性に応じてバリエーションが拡がり続ける起源を持ちながら、効率的かつ柔軟な運用が可能なミサイル体系として進化し続けています。

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