トヤマエビ

トヤマエビの概要

トヤマエビ（学名: Pandalus hypsinotus）は、寒海深海性に属し、主に日本海からベーリング海にかけて広がる水域に生息するエビの一種です。このエビは特に水深100mから200mの範囲で見られ、時には水深350mにまで達することもあります。トヤマエビは、その名の通り、富山湾で初めて発見されたことから名付けられ、漁業においても重要な存在です。このエビは多くの漁獲高を記録しており、冬の旬の味覚として知られています。

特徴

トヤマエビの体長は通常17cm程度ですが、中には25cmを超える大物も存在します。生きている状態では淡い紅色を呈し、頭胸甲側面には不規則な斑模様が特徴的です。また、腹側には赤褐色の横じまがあります。この横じまは、同じくエビの仲間であるボタンエビとは異なり、この点がトヤマエビと他種との識別に役立っています。頭胸甲の曲線は、トヤマエビが急傾斜であるのに対し、ボタンエビはより緩やかです。

生態的には、トヤマエビは体長約10cmでオスとして成熟しますが、他のタラバエビ科のエビと同様に性転換が見られます。通常、4歳までは雄として生活し、約4歳半で雌に変わり始め、5歳の時に初めての産卵を行います。生涯にわたり、彼女たちは抱卵を行い、最終的には8歳でその寿命を終えます。

捕獲と味わい

トヤマエビは、毎年10月から翌年の5月の間、底引き網やエビかご網を用いて捕獲されます。このエビの旬は冬にあたり、特にその味の良さから多くの人々に親しまれています。料理では、刺身や天ぷら、焼き物など多様な方法で楽しむことができます。

独島エビ問題

2017年、米国のトランプ大統領が招かれた晩餐会において、韓国大統領府が「独島エビ」と称するメニューを出しました。このエビがトヤマエビであるとの主張が、日本側からされ、抗議がなされました。韓国政府は、情勢を考慮してメニューから「独島」の文字を削除しましたが、韓国国内では今でも「独島海域で採れた海老」として独自の名称が使われています。これは、トヤマエビが持つブランドが国際的な場での認識のされ方に影響を与えている例となります。

地方名

トヤマエビには地域ごとに異なる呼び名が存在します。例えば、北海道の後志や檜山では「オオエビ」として知られ、富山県新湊では「ガスエビ」と呼ばれています。また、青森県深浦では「コエビ」、山形県では「シマエビ」として親しまれています。これらの別名は、地域特有の食文化や漁業活動に結びついており、それぞれの地域の人々にとって重要な食材となっています。

参考文献

トヤマエビに関する詳細情報は、阿部・末広著『ビジュアル版日本さかなづくし』（講談社・1985年）や『日本大百科全書』（小学館・1985年）で確認することができます。また、富山県水産試験場が提供する「富山湾を科学する」に関する報告も、情報源として信頼できます。

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