トライトン (原子力潜水艦)

USS Triton（トライトン）

USS Triton（SSRN/SSN-586）は、アメリカ海軍が運用するユニークな原子力潜水艦です。この艦は、同型艦が存在せず、過去に存在したタンバー級潜水艦の4番艦以来、4代目の「トライトン」として知られています。艦名の「Triton」は、ギリシャ神話に登場する海の神に由来しており、その名が示す通り、海に関連した歴史を持つ艦艇です。

艦艇の歴史

トライトンは、1959年11月10日に就役し、約25年間にわたる長いサービスを経て、1986年に正式に除籍されました。就役当初の約1年4ヶ月間は、レーダー哨戒潜水艦（SSRN）として分類されていましたが、その後、1961年に攻撃型潜水艦（SSN）に変更されました。

レーダー哨戒潜水艦の必要性

第二次世界大戦中、日本の自爆攻撃に直面した米海軍は、新たな艦種としてレーダー哨戒潜水艦の設計を決定しました。この艦艇は、空母機動部隊に対する航空機襲撃を早期に探知し、警報を発する重要な役割を担っていました。トライトンは、空母機動部隊に随行するための特異な水上高速力を持たせるため、２基の原子炉を搭載する設計がなされました。これは、当時の潜水艦の中で特筆すべきサイズと速力を実現しました。

マゼラン作戦

トライトンの特筆すべき任務の一つとして「マゼラン作戦」が挙げられます。この作戦では、潜水艦が浮上することなく世界一周を達成することが目的でした。1959年2月15日に出航し、その後の航海で赤道を越え、ホーン岬を回り、太平洋に接近しました。さらに、フィリピンでのマゼラン記念碑の確認など、様々な重要な地点を経て、最終的には84日間にわたる連続潜航を達成しました。

トライトンは、アメリカ海軍の「ポラリス計画」の一環として設計されており、核攻撃を様々な海域から実施する能力を試す役割も持っていました。実際には、3月5日に浮上して病人を抽出するために一度だけ水面に姿を現しましたが、それ以外は潜航して世界を航海しました。

長期作戦の心理的影響

この航海のもう一つの目的は、原潜が長期間にわたり作戦を行う中での限界を知ることでした。それに伴い、海軍の心理学者が乗り組んで、乗員の士気や健康状態を評価しました。結果として、60日を超える期間で士気が低下することが確認され、これが国家の潜水艦運用戦略に大きな影響を与えたとされています。

結論

トライトンは、そのユニークな設計、歴史的な航海、そして原子力潜水艦としての特別な役割により、アメリカ海軍の歴史の中で特筆すべき艦艇として記憶されています。レーダー哨戒潜水艦から攻撃型潜水艦への転換、長期潜航による士気の研究など、トライトンの活動は、潜水艦運用に関する重要な知見をもたらしました。

もう一度検索