トラス内閣

トラス内閣：44日間の軌跡

2022年9月6日、リズ・トラスはエリザベス2世からイギリス首相に任命され、トラス内閣が発足しました。これは、ボリス・ジョンソン前首相の辞任を受け、保守党党首選挙でトラス氏が勝利した結果です。トラス内閣は、2019年総選挙で選出された第58議会において保守党の多数派を背景に発足しましたが、その寿命はわずか44日間でした。

内閣発足からわずか2日後の9月8日、エリザベス2世が崩御。トラス内閣は、エリザベス2世女王の治世下最後の内閣であり、同時にチャールズ3世治世下最初の内閣という、歴史的な位置づけとなりました。

政策の混乱と短命政権

トラス内閣は、経済政策を中心に大きな注目を集めました。しかし、その政策は保守党内からも強い批判を浴び、市場の混乱を招く結果に。特に、1970年代以来の大規模減税策は、ポンド安や国債利回りの急騰を招き、国際通貨基金（IMF）からも警告を受けました。この減税策は、その後大部分が撤回されることになります。

エネルギー価格高騰への対応として、一般家庭への支援策も打ち出されましたが、当初発表された2年間の支援期間は半年に短縮されました。外交政策面では、ウクライナへの支援継続、対中強硬姿勢、そして中東和平への積極的な関与など、ジョンソン前政権の路線を継承する部分も見られました。しかし、短命政権であったため、多くの政策は実行に移されることなく終わりました。

主要政策

外交政策: トラス首相は外務大臣としての経験を生かし、外交分野への期待も高まりました。主要な外交政策として、ウクライナへの継続的な支援、ロシアへの制裁維持、対中強硬姿勢などが挙げられます。特に、中東政策では、イスラエルとの関係強化を示唆するなど、従来とは異なるアプローチを取ろうとしていました。日本とは、日英EPA締結の実績を踏まえ、TPP加盟に向けた協力関係強化を目指していました。

経済政策: 経済政策は、トラス内閣の最大の焦点であり、同時に最大の失敗要因となりました。当初、大規模な減税策が発表されましたが、市場の混乱を招き、撤回に追い込まれました。エネルギー価格高騰対策として発表された一般家庭への支援も、当初の計画から大幅に縮小されました。この経済政策の混乱が、トラス内閣の崩壊を決定づける大きな要因となりました。

内閣の推移と崩壊

内閣発足直後から、ポンド安や市場の混乱が続き、批判が強まりました。特に、減税策発表後の市場の反応は深刻で、ポンドは対ドルで37年ぶりの安値を付けました。政府は、国債を用いたエネルギー価格高騰対策を発表しましたが、その効果は限定的でした。

財務大臣のクワーテング氏の解任、減税策の大幅な撤回、そして内閣支持率の急落など、内閣は深刻な危機に直面しました。最終的に、トラス首相は就任からわずか44日後の10月20日に辞任を表明し、10月25日に内閣は総辞職しました。トラス内閣は、イギリス史上最短の在任期間を記録する政権となりました。

結論

トラス内閣は、大胆な経済政策を掲げたものの、市場の混乱や党内からの反発を招き、わずか44日間で崩壊しました。その短命ぶりは、イギリス政治史上に大きな衝撃を与え、今後の政策決定において、経済政策の慎重性や市場への影響予測の重要性を改めて認識させる結果となりました。また、エリザベス2世女王崩御直後の発足という歴史的な状況も相まって、トラス内閣の短い期間は多くの議論を呼び続けることになるでしょう。

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