トランスフォーマー (TRICERATOPSの曲)

TRICERATOPSが日本のロックシーンで確固たる地位を築く中、21枚目のシングルとして2006年3月22日に世に送り出されたのが「トランスフォーマー」です。この作品は、彼らがビクターエンタテインメントよりリリースしたシングル群の中でも、前作から約1年2ヶ月という比較的長いインターバルを経て発表された点が特徴的です。この期間は、バンドが新たな音楽性を模索し、楽曲制作にじっくりと時間をかけたことを示唆しているとも言えます。

シングルには、タイトルチューンである「トランスフォーマー」に加え、「WARP」そして「ロケットに乗って (Live)」の計3曲が収録されました。表題曲「トランスフォーマー」は、当時のTRICERATOPSが提示するサウンドの方向性を象徴する楽曲であり、リスナーに強い印象を与えました。

特に注目すべきは、収録曲の「WARP」が、自動車メーカーHondaが当時展開していた「NO SAME WAY」プロジェクトのテーマソングとして採用されたことです。このような大手企業のプロジェクトとのタイアップは、バンドの楽曲がテレビコマーシャルなどを通じて広くお茶の間に届く機会となり、普段ロックを聴かない層にもTRICERATOPSの存在を知らしめる重要な役割を果たしました。ポップでありながらも彼ららしいロックサウンドを持つ「WARP」は、プロジェクトのメッセージ性を効果的に伝える楽曲として機能したと考えられます。

さらに、シングルのカップリングには、貴重なライブ音源が収録されました。「ロケットに乗って (Live)」は、2005年11月12日に福岡のIMSで開催されたライブパフォーマンスから選ばれたテイクです。スタジオレコーディングされた音源とは異なり、メンバー3人による生演奏ならではの息遣いや、会場の熱気がそのまま閉じ込められています。約6分半という収録時間からは、ライブにおける彼らの自由な演奏スタイルや、楽曲が持つポテンシャルがステージ上でいかに解放されるかが伝わってきます。ファンにとっては、ライブ会場に足を運べなかったとしても、彼らの熱演ぶりを追体験できる嬉しいサプライズとなりました。

これらの収録曲全てについて、作詞および作曲はバンドのフロントマンでありソングライターの中核を担う和田唱が担当しています。そして、楽曲の編曲はTRICERATOPS自身、すなわち和田唱、林幸治、吉田佳史の3人で行われました。長年共に活動してきたメンバーならではの阿吽の呼吸で、和田のメロディと歌詞をバンドサウンドとして昇華させています。彼らが楽曲制作の全てのプロセスに関わることで、TRICERATOPS独特のグルーヴ感と洗練されたポップセンスが生まれるのです。

本作のリリース時には、ファンサービスの一環として特別なキャンペーンも実施されました。初回生産分のCDシングルには、同時期にリリースされたライブDVD「LIVE WARP!!!」とのW購入者を対象としたキャンペーンに応募できるハガキが封入されていました。これは、音源作品と映像作品の両方を手に取ってもらうことを促すだけでなく、熱心なファンとのエンゲージメントを高めるための施策と言えます。

「トランスフォーマー」は、単なる一シングルとしてだけでなく、後年の音楽シーンにもその名を刻んでいます。特に、他のアーティストがTRICERATOPSの楽曲をカバーするトリビュート企画において、この楽曲が重要な一曲として選ばれました。2020年にリリースされた敬意を表すアルバム『TRIBUTE TO TRICERATOPS』では、個性的な音楽性で知られるシンガーソングライターのKANが「トランスフォーマー」をカバーし、新たな魅力を引き出しています。オリジナルとは異なるアプローチで再構築されたKANバージョンは、楽曲の普遍的な良さを証明するとともに、TRICERATOPSが多くのミュージシャンからもリスペクトされている事実を物語っています。

このように、TRICERATOPSの21stシングル「トランスフォーマー」は、約1年2ヶ月の沈黙を破ってリリースされた意欲的な作品であり、強力なタイアップ、臨場感あふれるライブ音源、ファン垂涎のキャンペーン、そして後年のトリビュートカバーに至るまで、多角的な側面から語られるべき一枚です。彼らのキャリアにおける重要なターニングポイントの一つとして位置づけることができるでしょう。

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