トランス・ニューギニア語族

トランスニューギニア語族：ニューギニアの言語多様性の象徴

トランスニューギニア語族は、パプアニューギニア島を中心としたニューギニア島や周辺の島々に広がる、パプア諸語に属する言語の大きなグループです。パプア諸語の中で最も分布域が広く、世界で3番目に多くの言語を含む語族として知られています。話者数は約270万人にのぼると推定されています。

しかしながら、この語族の定義は未だ流動的です。どの言語までをトランスニューギニア語族に含めるかについては、研究者間で意見が一致しておらず、明確な境界線が引けていないのが現状です。そのため、語族に含まれる言語の数は466から493という幅のある範囲で示されています。

分類の現状と課題

トランスニューギニア語族の内部分類も複雑で、様々な分類体系が提案されています。ここでは、Ross (2005) の分類体系を参考に、主要な語派を紹介しますが、これはあくまで現時点での分類であり、今後の研究によって変更される可能性があります。

主要な語派には、以下のものがあります。

西トランスニューギニア語派: ニューギニア島の西部に分布する言語群。西ダニ語、エカリ語、東ティモール諸語（オイラタ・マカサエ諸語）、アロール・パンタール諸語などが含まれます。東ティモール諸語はインドネシア領のティモール島東部に分布しており、地理的に他の西トランスニューギニア語派の言語とは離れています。アロール・パンタール諸語は、インドネシアのアロール島とパンタール島に分布しています。
エンガ語派: パプアニューギニア高地地方に分布する言語群。エンガ語、フリ語、その他いくつかの言語が含まれます。
コロップム語派: パプアニューギニア高地地方に分布する言語群。ンドム語などが含まれます。
チンブ・ワギ語派: パプアニューギニア高地地方に分布する言語群。メルパ語（ハーゲン語）、ウンブ・ウング語（カウゲル語）、クマン語（チンブ語）などが含まれます。ウンブ・ウング語は、二十四進法を用いた数え方をすることで知られています。
カインアントゥ・ゴロカ語派: パプアニューギニア高地地方に分布する言語群。ベナベナ語などが含まれます。
フィニステレ・フォン語派: パプアニューギニア東部のフィニステレ半島とフォン半島に分布する言語群。カーテ語、ネコ語などが含まれます。
* 南東パプア語派: パプアニューギニア南東部に分布する言語群。コイアリ語派などが含まれます。

今後の研究

トランスニューギニア語族は、言語学上非常に興味深い対象です。その多様性と複雑さゆえに、分類体系の確立や各言語の記述研究は未だ途上です。言語構造や歴史的関係を解明するための更なる研究が期待されています。特に、言語間の系統関係を明らかにし、語族全体の系統樹を構築することは、今後の重要な課題です。また、絶滅の危機に瀕している言語も多く存在するため、それらの言語の記録と保存も急務です。これらの研究を通して、ニューギニア島の言語多様性の理解が深まり、人類の言語の進化に関する知見も得られるでしょう。

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