トランプ台上の首

トランプ台上の首

『トランプ台上の首』は、横溝正史が創り出した中編推理小説であり、「金田一耕助シリーズ」の一部として名を馳せています。この作品は1957年に短編として『オール讀物』に掲載され、1959年に中編として発表されました。生首の発見という衝撃的な設定は、同じく高木彬光の『刺青殺人事件』を思わせるところがありますが、横溝はこのテーマに挑むことで新たな物語を紡ぎ出しました。

あらすじ

物語は、隅田川沿いで水上惣菜屋を営む宇野宇之助が、彼の得意先であるアパートの一室で、ストリッパーの牧野アケミの生首を見つけるところから始まります。この事件が発生したのは11月24日のことで、胴体は消失しており、その行方は全く不明です。前夜、アケミの部屋ではトランプをしに集まった人々がいたとされ、支配人の郷田や伊東、同僚のストリッパー高安らは、警察の事情聴取を受けながらもアケミの生首が彼女のものであることを確認します。

金田一耕助は、事件の捜査に加わるため、現場を訪れます。彼は、アケミが数々の男性と交際を持っていたことや、最近では裕福なパトロンである稲川専蔵と関係を持つようになったことを知ります。ここで重要なのは、彼女の周囲にいた人物たちの証言から彼女の悪名高き行動が明らかになる点です。

物語の展開の中で、アケミの胴体と思われる物が入った貸ボートが発見され、そこには彼女の物と確認される血まみれのオーヴァが残されていました。また、アケミのパトロンである稲川専蔵も行方が分からなくなり、後に彼の死体が発見されることで、物語はさらに複雑化していきます。

金田一は、アケミの靴に刺さっていたガラスの粉に注目し、彼女が稲川の社長室を訪れていた可能性を示唆します。この間に、宇野はアケミをのぞき見したことや、彼女と絡む不気味なエピソードを持ち出し、彼の証言も重要な手がかりとなります。

主な登場人物

• - 金田一耕助：私立探偵であり、事件の真相を追う主人公。
• - 等々力大志：警視庁の警部で、金田一と共に捜査にあたる。
• - 牧野アケミ：事件の被害者であり、ミラノ座のストリッパー。
• - 宇野宇之助：水上惣菜屋の経営者で、事件の重要人物の一人。
• - 稲川専蔵：アケミのパトロンで、後に殺害される。

糸を織り成す推理

この物語は、金田一がさまざまな証言や証拠を基にして、次第に事件の全貌を明らかにしていく過程に魅力があります。特に、宇野とアケミの関係、そして金田一の鋭い観察力によって謎が解かれていく様子は、読者に緊張感を与える要素の一つです。横溝正史の流れるような文章運びと、巧妙なプロットは、推理小説を愛する者にとって堪えがたい魅力を放っています。

この作品は、推理小説の中でも高く評価され、多くの読者に支持を受け続けている名作です。その背景にある人間の欲望や陰謀への深い考察と、推理小説としての緻密な構成が見事に融合しているため、今なお色褪せることなく読み継がれているのです。

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