トラヴニク

トラヴニク：歴史と自然が織りなすボスニアの古都

トラヴニクは、ボスニア・ヘルツェゴビナの中央部に位置する魅力的な都市です。サラエヴォから北西へ約100km、中央ボスニア県の県都として、その豊かな歴史と美しい自然景観で訪れる人々を魅了しています。1697年から1850年にかけては、オスマン帝国ボスニア州の首府として繁栄し、政治・文化の中心地としての役割を果たしました。

地理と気候

トラヴニクは、ボスナ川の支流であるラシュヴァ川が流れる渓谷に位置しています。周囲をヴィレニツァ山やヴラシチ山などの山々に囲まれ、標高514mの盆地に広がっています。ヴラシチ山の標高は1,933mに達し、その名はヴラフ人に由来します。気候は大陸性気候で、夏は平均18.2℃、冬は0.5℃と過ごしやすいですが、冬季には降雪も見られます。

歴史

トラヴニクの歴史は古く、青銅器時代にまで遡るとされています。ローマ時代には集落が存在し、要塞や建物跡、初期キリスト教聖堂の遺構、ローマのコインなどが発見されています。これらの発見から、トラヴニクがローマの植民地であったゼニツァと繋がりがあったことが示唆されています。

1244年にはハンガリー王ベーラ4世によって、この地域が言及され、トラヴニクは城砦都市の一つとして記録されました。カシュテル城砦は、現在も旧市街に残っています。中世にはボスニア王国のラシュヴァ州に属していました。

オスマン帝国の支配下に入ると、トラヴニクは急速に発展し、イスラム文化が色濃く反映された都市へと変貌を遂げました。モスクやバザールが建設され、地域の中心地としての地位を確立しました。1699年には、サラエヴォがオイゲン・フォン・ザヴォイエンによって焼き払われた後、トラヴニクはオスマン帝国ボスニア州の首府となり、ワズィールの邸宅が置かれました。西側の前線都市として、フランスやオーストリア＝ハンガリー帝国の領事館も設置され、国際的な重要性も高まりました。

オーストリア＝ハンガリー帝国の支配下に入ると、西洋化と工業化が進められましたが、都市としての重要性は低下しました。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争時には、多くの市民が戦火を逃れましたが、紛争終結後、トラヴニクは中央ボスニア県の県都として再出発しました。

人口

紛争前の1991年の国勢調査では、ボシュニャク人が45%、クロアチア人が37%、セルビア人が11%を占めていました。紛争の影響で人口構成は変化していますが、多様な民族が共存する都市としての特徴は受け継がれています。

経済

紛争の影響で経済は低迷しましたが、近年は回復傾向にあります。農業や畜産業が主要な産業であり、マッチや家具の製造も行われています。食品加工業も盛んで、精肉や製乳などの分野で発展が見られます。

文化

トラヴニクは豊かな文化遺産を有しており、特にオスマン帝国時代のものが多く残っています。旧市街には、モスクやカトリック教会、オスマンの墓地など、歴史的な建造物が点在しています。市立博物館では、この地域の歴史や文化に触れることができます。また、ノーベル文学賞を受賞した作家イヴォ・アンドリッチや、サッカーのクロアチア代表監督を務めたミロスラヴ・チロ・ブラジェビッチなど、著名な人物を輩出しています。

観光

トラヴニクは、歴史的な観光資源と自然の美しさを兼ね備えた観光都市です。近隣のヴラシチ山は、スキーやハイキング、そり滑りなどのアクティビティを楽しめる人気のスポットです。ボスニア・ヘルツェゴビナを訪れる際には、ぜひトラヴニクにも足を運んでみてください。

スポーツ

サッカークラブ、NKトラヴニクが有名です。

姉妹都市

ライプツィヒ、ドイツ
クルシェヴァツ、セルビア

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