トリッペル SG6

トリッペル SG6 (Trippel SG6)

トリッペル SG6は、1930年代にドイツのエンジニアであるハンス・トリッペルによって設計された水陸両用車です。この車両は、第二次世界大戦中、ドイツ国防軍や武装親衛隊によって広く使用されました。

開発の背景

ハンス・トリッペルは1930年代初頭から独学で自動車製作に取り組み、1935年には水陸両用オフロード車のプロトタイプを完成させました。このプロトタイプは当時のナチス幹部に公開され、助成金を受け取った彼はホンブルクに工場を設立し、SG6の開発に着手しました。

SG6は、従来の市販車のシャーシに船型の車体を載せるのではなく、船型の車体にサスペンションなどの走行装置を効率よく組み込んだ設計が特徴です。これは、より優れた水上性能と陸上走行性能を両立させるための革新でした。最初は民間向けを想定していましたが、戦争の影響で軍からの発注が中心となり、生産の方針も変わりました。

軍からの需要

トリッペルはドイツ軍から20台の注文を受け、SG6の生産を1938年から1940年まで行いました。軍の要請に応じて、乗員数を16名に拡大したモデルも開発されました。さらに、トリッペルはイタリア軍への販売も試み、ホンブルクからナポリまで地上走行を行い、その後カプリ島までの海上でのパフォーマンスを成功させました。

SG6の改良と生産

1940年には、より効率的な水上走行が可能な新型モデル、SG6コロニアル・パイオニアの開発が進められましたが、戦争の激化に伴い、このモデルの生産はほとんど行われませんでした。同年、フランス侵攻の際には、モルスハイムにあったブガッティの自動車工場がトリッペルの管理下に置かれ、この工場で新たな軍用バージョンの生産が始まりました。この新型水陸両用車はSG6/41と名付けられ、1943年頃まで生産が続けられました。

生産数とその影響

生産されたSG6の数は資料によって異なりますが、200台から1,000台程度に留まったと考えられています。この時期には、フェルディナンド・ポルシェが開発したシュビムワーゲンが大量生産され、ドイツ軍の水陸両用車として広く導入されるようになっていました。

総評

トリッペル SG6はその革新的なデザインと性能から、当時の水陸両用車の一つの到達点を示しています。ハンス・トリッペルの技術的貢献は、後の水陸両用車両の設計に大きな影響を与えました。第二次世界大戦時の駆け引きや技術革新の中で、SG6は重要な役割を果たしました。

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