トルコ赤新月社

トルコ赤新月社の歴史

トルコ赤新月社（Türk Kızılayı）は、国際赤十字・赤新月運動の基本原則である「人道、公平、中立、独立、奉仕、単一、世界性」に基づき活動する、トルコを代表する慈善団体です。その歴史は、オスマン帝国時代にまで遡ります。

赤十字の設立とオスマン帝国

1864年、ジュネーブ条約の採択により国際赤十字社が発足。オスマン帝国も翌年にこの条約を承認しました。しかし、当初は赤十字の有用性に疑問を呈する声もあり、その活動は不透明なものでした。1867年、アブドゥッラー博士がパリでの赤十字会議に派遣され、国際支援委員会からオスマン帝国における負傷者救済組織設立の委任状を得ました。

負傷・疾病兵士への支援と救援組織

帰国したアブドゥッラー博士は組織設立を試みましたが、十字架の紋章がキリスト教のシンボルであることや、軍関係者からの不信感から困難に直面しました。しかし、最終的にはエクレム・オメル・パシャの賛同を得て、1868年6月11日に「負傷・疾病兵士への支援と救援組織」が設立されました。この組織は、いかなる紋章も使用しないとされました。

しかし、運営規則は軍関係者から「市民の兵役業務に干渉する」と評価され承認されず、アブドゥッラー博士の死去後、組織は活動を停止しました。

オスマン帝国の赤新月協会

1876年、セルビア・モンテネグロとの紛争をきっかけに、トルコ国内で再び兵士への支援組織設立の声が高まりました。セルビア軍が赤十字の支援を受けている一方、オスマン帝国軍には何の支援もなかったのです。ジュネーブ条約では、署名をしていない、または必要条件を満たしていない政府の兵士は支援対象外とされていたためです。

そこで、イスタンブールに拠点を設け、赤十字の支援を受けられるよう働きかけが始まりました。その結果、1876年8月13日に、赤十字の代表者らが集まり、新たなシンボルとして赤新月を採用することが決定しました。この決定は、ジュネーブにある本部の仲介の元で全政府に申請され、ほとんどの政府に承認されました。こうして1877年4月14日、赤新月協会が正式に設立され、19日に「オスマン帝国赤新月協会」という名称が発表されました。

露土戦争と希土戦争

オスマン帝国赤新月協会は、設立直後の露土戦争において、特にプレヴェン包囲戦で4000人近い負傷兵を看護するなどの活躍を見せました。しかし、その後、憲法に触れる多くの組織・団体の活動が制限されたため、赤新月社の活動も休止せざるを得なくなりました。1897年の希土戦争では、赤新月社は再び活動を開始し、寄付を集めて負傷兵の輸送や医薬品の送付を行いましたが、戦争終結後、再び活動を休止しました。

立憲君主制の施行

立憲君主制の施行に伴い、赤新月社は再建され、政府の官僚らがその任務を担いました。1911年のイスタンブールでの大規模火災での活動は、政府からのさらなる支援を受けるきっかけとなりました。かつての外務大臣の妻は、短期間で多額の寄付を集め、新たな運営規則が政府によって承認されました。会員による運営委員会が組織され、トプハーネに本部が設立されました。その後、多くの政府高官が赤新月協会のメンバーとなり、1912年には女性中心委員会も設立されました。女性たちは、戦争で前線にいる兵士や、その背後の市民を支援する活動を行いました。

国民闘争期

第一次世界大戦後、国民闘争が始まると、赤新月協会は占領軍とイスタンブール政府の圧力にさらされました。1920年3月には本部が占拠され、総書記官はアンカラに渡り国民政府に従事しました。アンカラ事務局が設立され、イスタンブールの本部と共にアナトリア各地の支部を統括しました。イスタンブールからアナトリアに救命用具が送られ、多くの職員が前線で活動しました。

トルコ赤新月協会

1922年10月29日、赤新月協会は「トルコ赤新月協会」と改名しました。トルコ・ギリシア間の住民交換では、トルコへ移住する人々への医療支援や物資提供を行いました。1925年には本部がアンカラに移転し、同年に最初の看護学校が開校されました。

赤新月社という名の獲得

協会の名称は、1935年にトルコ赤新月社協会に、1947年にはトルコ赤新月社へと変更されました。

現在、トルコ赤新月社は、国内外で人道支援活動を続けています。

もう一度検索