トルコ軍によるシリア侵攻 (2019年)

トルコ軍によるシリア侵攻（2019年）: 平和の泉作戦

2019年10月9日、トルコ軍は「平和の泉作戦」として知られる軍事作戦を開始し、シリア国境を越えてクルド人勢力に攻撃を仕掛けました。この作戦の背景には、トルコ国内のクルド人反政府勢力がシリア側に拠点を持っているという認識があり、シリア北部の混乱を利用して武力介入を行ったものです。

作戦の背景

トルコによるシリア侵攻は、2016年以降、シリア内戦で生じた政治的な空白地帯を背景に行われました。その間、トルコはシリアの反政府勢力やイスラーム国家(ISIL)と戦った結果、シリア内に様々な軍事行動を展開しました。また、2018年末にアメリカがISILの撃退を宣言したことも、シリア北部の勢力図に影響を与えました。このような状況が続く中、トルコは2019年10月6日、クルド人民兵を標的にした軍事侵攻の予告を行いました。

アメリカはトルコの侵攻に対して軍事支援を行わない姿勢を示し、ドナルド・トランプ大統領はトルコの行動を容認するような発言を行いました。これにより、トルコの判断が強まったと見られます。

軍事作戦の開始

2019年10月9日、トルコ軍は砲撃と空爆で攻撃を開始し、地上部隊による越境作戦も実施しました。シリア民主軍はトルコの攻勢に反抗しましたが、初日に民間人の死者が出るなど深刻な事態が発生しました。トルコ国防省は、自由シリア軍と共にユーフラテス川東側に進攻したと発表しています。

トルコ側の作戦の目的は、クルド人中心のシリア民主軍が国境近くから排除され、緩衝地帯が設けられることでした。エルドアン大統領は、国際社会に対し、作戦を占領と非難した場合、360万人のシリア難民を送り込むという警告を発しました。

国際的な反響

シリア民主軍は、ロシアに支援を要請し、10月14日にはシリア政府軍が進駐しました。これにより、アメリカ軍撤退後の軍事的空白が埋められる形となります。戦闘が激化する中で、アメリカは事態収拾のために介入を試みました。

10月17日には、アメリカの仲介により5日間の停戦が成立します。クルド人勢力は停戦期間中に国境近くから撤退することが求められました。そして、十月下旬にはロシアとトルコの首脳が合意し、トルコはクルド人勢力への攻撃を再開する必要がないと発表しました。この合意により、トルコの操作圏は拡大し、クルド人部隊の範囲は縮小しました。

アメリカの和平工作

アメリカにおいても、トランプ大統領はトルコ軍の攻撃に対抗するべく、経済制裁を示唆しました。しかし、トルコとの交渉を通じて、一時は経済制裁を解除し、少数の軍をシリアに残す方針を示しました。これにより国際的な反応は大きく揺れ動き、トランプ大統領の対応には批判が集まりました。

結論

トルコのシリア侵攻は、地域の安定に多大な影響を及ぼし、国際的な緊張を高める結果となりました。クルド人勢力とその支持を受ける国々との関係、さらには地域の安全保障に関する問題は、今後も続く課題として残されています。この事態は、国際社会がどのように難民や戦闘の影響に対応するかという重要な問題を提示しています。

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