ドイツの地方行政区分

ドイツの地方行政区分：16の州と多層的な行政構造

ドイツ連邦共和国は、16の州（Land）から構成されています。各州は単なる地方行政区画ではなく、独自の憲法、議会、政府、裁判所を有する高い自治権を持つ半独立的な存在です。日本語では「州」「連邦州」「ドイツの構成国」など様々な訳語がありますが、ドイツ語では日常会話では「Bundesland（連邦州）」や「Staat（国家）」といった言葉がよく使われます。

1990年の東西ドイツ統一後、統一ドイツの象徴として、それまでの「Bundesstaat（連邦構成国）」から「Land」へと名称が変更されました。これは、東西両方の州が対等な立場で統一されたドイツを形成していくという意思表示を込めたものでした。

複雑な地方行政のピラミッド

ドイツの地方行政は、州政府を頂点とする複雑なピラミッド構造になっています。州政府は、首相府、財務省、内務省、法務省などの複数の省庁から構成され、それぞれの省庁が下位組織を監督します。

州政府の下には、いくつかの層があります。まず、Regierungsbezirk（行政管区、あるいは「県」）があり、その下にLandkreis（郡）が位置します。さらに、郡から独立したKreisfreie Stadt（独立市）と、郡の下位区分であるGemeinde（市町村）が存在します。

首都ベルリン、ハンブルク、そしてブレーメンとその外港ブレーマーハーフェンは、それぞれ単独で州としての行政権限を持つ都市州（Stadtstaat）として扱われています。都市州の下位区分はStadtbezirk（区）となります。

行政管区は、州によって数にばらつきがあり、例えばバーデン＝ヴュルテンベルク州には4つ、バイエルン州には7つ存在します。郡は全国で323あり、郡長は住民の直接選挙で選出されます。独立市は人口規模が大きく、郡レベルの業務を独自に処理できる自治体です。市町村は地方自治権を有する最小の地方公共団体で、日本の基礎自治体に相当します。

いくつかの州では、郡と市町村の中間に、市町村連合（Kommunalverbände）と呼ばれる組織が存在し、行政サービスを共同で提供しています。この連合は、州によってAmt、Samtgemeinde、Verbandsgemeinde、Gemeindeverwaltungsverbandなど、様々な名称で呼ばれています。

16の州：多様な特徴

ドイツには、歴史、文化、経済的に多様な特徴を持つ16の州が存在します。各州は独自の州憲法に基づき、独自の政策を展開しています。人口や面積、経済構造も州によって大きく異なり、ドイツ連邦全体の多様性を反映しています。（ここでは、個々の州の詳細な説明は割愛します。）

地方分権と連邦国家

ドイツの地方行政は、地方分権を重視したシステムとなっています。各州は広範な自治権を持ちますが、それはあくまでもドイツ連邦国家の枠組みの中で行使されるものであり、ドイツが国家連合になることはありません。このバランスが、ドイツの政治システムを特徴づける重要な要素となっています。

参考文献

大西健夫（編）、『ドイツの政治；連邦制国家の構造と機能』、早稲田大学出版部、1992年
木佐茂男（著）、『豊かさを生む地方自治；ドイツを歩いて考える』、日本評論社、1996年
大西健夫、U・リンス（編）、『ドイツの統合；分断国家から普通の国へ』、早稲田大学出版部、1999年
片木淳（著）、『地方主権の国；ドイツ』、ぎょうせい、2003年
* （財）自治体国際化協会（編）、『ドイツの地方自治』（PDF版）、（財）自治体国際化協会、2003年

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