ドゥアルテ1世 (ポルトガル王)

ドゥアルテ1世：ポルトガルの雄弁王

ドゥアルテ1世（Duarte I, 1391年10月31日 - 1438年9月9日）は、ジョアン1世とフィリパ・オブ・ランカスターの息子として生まれ、1433年から1438年までポルトガル王として在位しました。「雄弁王」（o Eloquente）の異名を持ち、文化と学問を奨励したことで知られています。近年では、弟であるエンリケ航海王子の肖像画として知られるものが、実はドゥアルテ1世を描いたものであるという説も浮上しています。

生涯と業績

ドゥアルテ1世は、父ジョアン1世の政策を継承し、ポルトガルの発展に尽力しました。彼は、法律や道徳に関する著作を残し、知識人としての側面も持ち合わせていました。治世は短期間でしたが、文化と学問の振興に力を注ぎ、ポルトガルのルネサンスの先駆けとしての役割を果たしました。

1428年には、アラゴン王フェルナンド1世の娘レオノールと結婚し、9人の子をもうけました。しかし、成人したのは以下の5人でした。

アフォンソ5世（1432年 - 1481年）：ポルトガル王位を継承
フェルナンド（1433年 - 1470年）：ヴィゼウ公。マヌエル1世の父
レオノール（1434年 - 1467年）：神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世の皇后。皇帝マクシミリアン1世の母
カタリーナ（1436年 - 1463年）：尼僧
* ジョアナ（1439年 - 1475年）：カスティーリャ王エンリケ4世の2度目の妃

タンジール遠征と悲劇

ドゥアルテ1世の治世における最大の出来事は、1437年に行われたタンジール遠征でした。この遠征は失敗に終わり、弟のフェルナンドがアラブ軍の人質となってしまいます。アラブ側は「セウタ返還が実現すれば王子を釈放する」という条件を提示しましたが、コルテス（議会）はこれに反対し、交渉は難航しました。王子救出のために有効な手段を講じることができない状況に、ドゥアルテ1世は精神的に追い詰められていきました。

その結果、当時流行していたペストに罹患し、1438年に死去しました。王子の救出を果たすことができなかった苦悩が、彼の健康を蝕んだと考えられています。ドゥアルテ1世の死後、王位は息子のアフォンソ5世が継承しました。

評価

ドゥアルテ1世は、短い治世ながらもポルトガルの文化と学問の発展に貢献しました。しかし、タンジール遠征の失敗と弟の人質事件は、彼に大きな精神的負担を与え、その生涯を縮めることになりました。彼の治世は、ポルトガル史における悲劇的な出来事として記憶されています。

ドゥアルテ1世の肖像については、弟エンリケ航海王子のものとして知られていたものが、実はドゥアルテ1世を描いたものであるという説が近年有力視されています。もしそうであれば、彼の知的で憂いを帯びた表情が、より鮮明に後世に伝えられることになるでしょう。

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