トゥッカ

トゥッカ：早逝のブラジル人音楽家の生涯と音楽

トゥッカ（Tuca）、本名ヴァレニザ・ザグニ・ダ・シルヴァ（Valeniza Zagni da Silva、1944年10月17日 - 1978年8月5日）は、ブラジル出身のギタリスト、歌手、そして作曲家として知られています。その音楽活動は、ブラジル国内のみならず、国際的な音楽シーンにも足跡を残しました。

生涯

サンパウロで生まれたトゥッカは、幼少期から音楽に親しみ、パウリスタ音楽院でクラシック音楽を学びました。その後、サンパウロ大学の建築学部へ進学し、シコ・ブアルキやトッキーニョといった、後にブラジル音楽界を担う才能たちと出会い、音楽活動を本格的にスタートさせました。

1962年には、自作曲「Homem de verdade」がアナ・ルシアによって歌われ、作曲家としての才能を開花させます。1966年には、TV Excelsiorが主催した音楽祭で、アイアート・モレイラとのデュエットで「Porta Estandarte」を歌い、見事第一位を獲得。同年には、デビューアルバム「Meu Eu」を発表し、音楽家としての地位を確立しました。

また、同年には外務省から派遣され、ルアンダで開催された「ブラジル芸術週間」にジョンゴ・トリオと共に出演するなど、国際的な舞台でも活躍しました。1968年には、TV Excelsiorの音楽祭で、ソプラノ歌手のステラ・マリスと共に「Paixão segundo o amor」を歌い、3位に入賞。フィリップス・レコードとの契約も結び、アルバム「Tuca」を発表しました。

1969年、トゥッカはフランスへと拠点を移します。1971年には、フランソワーズ・アルディのアルバム「私の詩集（La Question）」にギタリストとして参加し、全12曲中10曲の作曲を担当。同年には、亡命中のナラ・レオンのアルバム「美しきボサノヴァのミューズ（Dez Anos Depois）」にもギターで参加するなど、ヨーロッパでの音楽活動を精力的に行いました。

ヨーロッパでは、ミシェル・ルナールと楽曲を共作するなどしましたが、レコード会社との契約は解除され、1974年にブラジルへ帰国。Som Livre社からアルバム「Dracula, I Love You」を発表しました。同年には、自作曲「Berceuse」がテレビドラマのサウンドトラックに起用されるなど、再び注目を集めます。

1977年には、ブラジルのロックバンド「Som Nosso de Cada Dia」のアルバムに楽曲を提供するなど、幅広い音楽活動を展開しました。

しかし、1970年代後半、トゥッカは健康上の問題を抱えるようになります。体重が140キロに達したため、減量を開始しましたが、医学的なフォローアップがないまま極端なダイエットを行った結果、深刻な栄養失調に陥ってしまいます。フランソワーズ・アルディによれば、「彼女は短期間で約40キロ痩せてしまった」とのことです。

1978年8月5日、薬品の過剰摂取が原因と思われる心臓麻痺により、33歳という若さでこの世を去りました。

ディスコグラフィ

1966年 - Meu Eu (Chantecler / CMG-2350)
1968年 - Tuca (Philips / R-765 037 L)
* 1974年 - Drácula, I love you (Som Livre / 403.6046)

トゥッカの音楽は、その短い生涯にも関わらず、多くの人々に影響を与え続けています。彼女の才能と情熱は、これからも音楽史に刻まれ続けるでしょう。

もう一度検索